フランツ・リスト70歳で作った曲 時代を先取りしていた「暗い雲」

建築予定地やご希望の地域の工務店へ一括無料資料請求

20世紀を20年以上先取りした先見性

   「ラ・カンパネラ」や「エステ荘の噴水」や「タランテラ」や「ピアノソナタ ロ短調」といった、演奏会映えする、長い曲を多く残したリストですが、晩年作曲したピアノ曲は5分程度のごく短いものが多く、しかも、斬新なものが多くなっています。どこが斬新かというと、クラシック音楽の根幹である長調や短調といった「調性」から、逸脱気味で、彼の没後20世紀になってから登場する「無調音楽」に通じるところがあるのです。

   「暗い雲」は、まさにその題名の通り、不気味かつ陰鬱な雰囲気の旋律から始まる短い曲です。しかし、単なる雲や天候の描写ではなく、19世紀の様々なシーンを生き抜いたリストが到達した、深い哲学的な境地を思わせる曲となっています。

   多くの彼のレパートリーとは異なり、華やかでも分かりやすくもありませんが、じっくり噛み締めて聴きたいリストの晩年の味のある曲です。そこには20世紀の未来を20年以上先取りしたリストの先見性をも見ることができます。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

姉妹サイト