■『仮想通貨とブロックチェーン』(木ノ内敏久著、日経文庫)
ブロックチェーン技術は、人と人、モノとモノが、中央の管理者を介在せずに取引するP2P技術である。IoT(モノのインターネット)の時代に欠かせない技術として、その社会的影響はインターネット技術以上とも言われる。日本では、フィンテック、仮想通貨に関心が集まりすぎている。本書は、ビットコインおよびイーサリアムの二つの仮想通貨を中心に記述されているが、仮想通貨以外の分野にどのような将来性があるかにも触れており、そうした内容をご紹介したい。
仮想通貨の性格とその将来
筆者は、貨幣の本質は「譲渡可能な債務」だという。中央銀行の信用がある限り、通貨がもともと誰の債務かを考えることなく、決済や貯蓄に用いることができる。これに対して、ブロックチェーン技術では、発行主体がいない仮想通貨が流通する。政府は、仮想通貨には強制通用力が法律で担保されておらず、通貨には該当しないと国会答弁したが、その後、資金決済法において5つの要件を満たすものを仮想通貨と定義した。そして国際的な組織(FATF)の勧告を受けて仮想通貨の取次ぎ、交換をする業者を登録制にし、利用者の資産保全とマネーロンダリング対策を実施している。発行主体のない仮想通貨の将来は、各国の法制度が調和し、それぞれの仮想通貨が、その価値が安定するアルゴリズムを形成できるかにかかっている。