モバイル決済が中国社会を変えた
次々とこうした新サービスが生まれた背景には、モバイル決済が短期間のうちに一挙に中国全土に広がったという事情がある。
もちろんそれはモバイル決済それ自体の「利便性」が大きいが、中国の場合、従来の現金経済に様々な不便があったことも大きな理由だという。
著者によれば、中国では汚れてヨレヨレになっている紙幣をよく見かけたそうだ。自販機の紙幣投入口にお札を入れても戻ってきてしまうから、自販機そのものがあまり普及しなかったという。
こうした現金決済の制約の中で、スマホによる決済がやってきたのだ。
今では、馬車でクルミを売る行商も、街角で二胡を演奏する高齢者も、モバイル決裁だ。自分の振込先を示すQRコードを荷台や空き缶に貼り付け、客にスマホで読み取ってもらい、代金や投げ銭を受け取っている。
今や、モバイル決済に対応していない場所は、観光地の入園料などに限られるという。
日本においても、昨年から各種QRコード決済サービスが本格的にスタートした。本年10月の消費増税に当たっては経済対策の一環としてキャッシュレス決済時のポイント還元が予定されるなど、キャッシュレスの普及に向けた取組みも本格化している。
人口減少に伴って働き手が大きく減る日本にとっても、キャッシュレス化は有効な方策と期待されるが、果たして、中国のように爆発的なスピードで普及していくのかどうか、それとも、現金経済がなお続くのか、興味深いところだ。