試合開始15分間で判定の基準が見えてくる
―石井さんご自身、審判ライセンスをお持ちでしたが、実際に審判のリアルな姿を見て新たに気づいたこと、驚いたことは何でしょうか。
石井 選手たちと凄くコミュニケーションをとっているのは驚きました。選手がプレーしやすいように声かけしたり、なぜファウルなのか説明したり。
またエキサイトし過ぎた選手と一線をひく難しさも見えます。「日本の審判はコミュニケーションをとらない」とこぼす選手もいますが、とり方の問題もあると思います。本作を見れば、正しいコミュニケーションがあれば、審判と選手は凄く良い関係にあります。試合後は選手コメントのみで審判が語られてしまいますが、その報道が危険なことも伝わると思います。大事なのは試合のレフェリングの中身であるべきですよね。その中身を初公開できたのは、日本サッカー協会の協力があり、Jリーグの制作があってこそでもあります。
―普段は聞けない審判の本音ほか、本作の「裏話」があったら教えていただけますか。
石井 本作では「人となり」が見えると思います。「普段は聞けない審判の本音」というよりも、「審判も監督や選手と同じ人間」というのを感じました。あとは、本作を撮影するにあたり、「大きな事象があったらどうしよう」とドキドキしていました。たとえば、ミスジャッジや乱闘があったとしても、それをカットするのは不自然じゃないですか。だから、何も起こらないように祈っていましたね(笑)。幸運にも、弊社のカメラが入った試合では、何もなく普通に試合が終わったので良かったです。あとは、試合中の選手たちは凄く興奮しているのが分かりました(笑) 。
―今後のJリーグや日本代表戦、さらに2020年の東京五輪の試合を見るうえで、審判のどんな仕草や動作を見ると、観戦がもっと面白くなるでしょうか。
石井 玄人には「それは違う」と言われるかもしれませんが、誰にでも分かりやすく審判を見るとなると、立ち上がりの15分だけ審判に注目してみてはいかがでしょうか。そこで「ファウルをとる」「フットボールコンタクトとする範囲が広い」など判定の基準が見えます。あとは、そこで掴んだ特徴で残り時間を観戦すれば、「この審判は〇〇だから、こうだよな」と納得できて、ストレスは減ると思います。
あとは、スタンドとピッチが離れていると、どうしても判定の〇×は分からない。でも、選手がアピールすれば、審判に懐疑的になると思いますが、その時に審判のポジショニングを見てはいかがでしょうか。良いポジションにいるならば、選手に呼応するのではなく、判定を受け入れた方が試合観戦のストレスは減ると思います。もちろん、審判へのアピールも含めて、試合観戦の醍醐味という方もいると思いますが、私はファン時代の後期は、そのように観戦してストレスなく試合を楽しんでいました。お酒片手に(笑)。