100人超のウクレレ、圧迫骨折の加山雄三が
個人フェスと一般的なフェスの最大の違いは、ホストとなっているバンドやアーティストのホスピタリティだろう。出演者の紹介や進行。司会の女性DJ、きゃんひとみと与座よしあきにBEGINも加わって会場を盛り上げてゆく。
メンバー4人が全員歌うという沖縄出身の若手バンド、HoRookies(ホルキーズ)や伊江島出身、21歳のシンガーソングライター、Anly(アンリィ)、ハワイのウクレレ名人、ハーブ・オオタ・ジュニアと110人のウクレレ奏者、BEGINの比嘉栄昇が開発した三線とギターを合わせた楽器、一五一会(いちごいちえ)を取り入れたインスツルメンタル&コーラスバンド、The Breeze&Iは東京で行われる「うたの日」の常連、南国感溢れる演奏が続く中で登場したのがメインゲスト、加山雄三。ウクレレを使った彼の代表曲「お嫁においで」にハーブ・オオタ・ジュニアが加わり100人を超える沖縄のフラダンスサークルのメンバーが色を添える。移民数の多いことで知られるハワイと沖縄。戦後、焦土と化し食料不足に苦しむ沖縄がハワイから贈られた550頭の豚で救われたという縁もある沖縄とハワイが音楽を通じて重なり合う。「うたの日」に行われている「豚の恩返し募金」は、お返しにハワイに550本の楽器を贈ろうと始まったものだ。
ゲストの加山雄三は、いつものギターを持っていなかった。彼は「背骨を圧迫骨折していて深くお辞儀が出来ずギターが持てない」と明かして、それでも堂々たる熱唱を聞かせてくれた。
そんな彼を笑顔の合唱と手拍子で迎えた客席を見ていて気付いたことがあった。
スマホをかざして写真を撮っている人がいない。いてもちらほらという程度でほぼ全員が立ち上がって思い思いにステージに視線を向けている。
加山雄三は82歳。今後、沖縄の野外で見ることはもうないかもしれない。しかも、骨折をおしてステージに立っている。
そんな姿をスマホに収めようとするのではなく一緒に歌い身体を動かすことで噛みしめている。それが「うたの日」ならではに思えた。加山雄三は終演後、BEGINに対して「お客さんが温かかった」と感想を伝えたのだそうだ。ステージで歌う人間にとって、スマホのカメラの放列で迎えられるより笑顔の合唱で迎えられる方が嬉しいというのは容易に想像できる。
まさに「うたの日」だと思った。