バスク風の旋律に超絶技巧も織り込まれた小品
周りの作曲家から、数多くの素晴らしい作品を献呈されてはいましたが、ホームズも聴いたはずのサラサーテの演奏会は、彼自身の作品が多くプログラミングされるのが常でした。
現在のサラサーテの作品は、スペインでヒターノと呼ばれるロマの人たちの音楽を入れた「ツィゴイネルワイゼン」と、主人公ドン・ホセがバスク人という設定のフランスの作曲家ビゼーのオペラ、「カルメン」の旋律をちりばめた「カルメン幻想曲」の2曲が飛びぬけて有名で、演奏回数も多くなっています。
しかし、彼のルーツである、「バスク」を題材にした「バスク奇想曲」は、バスク独特の「ソルツィーコ」と呼ばれるダンスの独特のリズムを取り入れたり、バスク風の旋律をちりばめたりしてあり、彼のルーツである謎の国「バスク」を音楽で味わうことのできる1曲に仕上がっています。5分ほどの長くない曲ですが、サラサーテの超絶技巧も織り込まれ、聞いていて楽しい小品です。サラサーテは有名曲以外にも、たくさん味のあるヴァイオリン曲を残しました。
彼が没したのは世紀も変わった1908年、フランス側のバスクの町、ビアリッツにおいてでした。
本田聖嗣