週刊エコノミスト(6月25日号)の「長嶋修の一棟両断」で、不動産コンサルタントの長嶋さんが空き家の問題を論じている。空き家が増え続ける根本原因は、人口減より新築の建て過ぎにある、という主張だ。筆者は広告代理店、不動産会社を経て、20年前に個人向けコンサル会社を設立、メディアへの登場も多い。
過剰の原点は、都市部の住宅不足を受けて1966年に施行された住宅建設計画法だという。5年ごとの新築目標を定めたこの法律により、マイホームが量産されることになる。高度成長が終わり、住宅が足りてきても、景気対策などを名目に新築がもてはやされた。
「その結果、とめどない新築住宅建設と、その分増えてしまう空き家対策という、矛盾する二つの対策に私たちは追われているわけだ」
これからも空き家は増え続け、15年後には2000万戸を突破すると予測される。その時点で、全住宅に占める空き家の割合は30%に達するというから、異常な余りようだ。
2015年には、防犯、景観、衛生上の理由から放置できない空き家については、所有者の特定や立ち入り調査のほか、行政による解体、解体費用の請求ができるようになった。
景気を冷やすなと
「しかし」と筆者は続ける。「空き家増加の本質的な原因は『人口・世帯数減少』ではなく『新築住宅の過剰建設』にある」...対症療法には限りがある、というわけだ。
先進国のほとんどが、5年10年の間にどのくらい新築を造ればよいかを考え、予算や税制で需給を調整している。英国の空き家率は3~4%、ドイツでは1%前後という。
「日本はこうした目安がなく、『景気を冷やしてはいけない』という1点を目的に新築住宅促進政策が続いている」と指摘する長嶋さん。住宅ローン控除、住まい給付金、固定資産税減免など、バラマキ的に、あるいは惰性で続く新築促進策をやり玉にあげる。
なによりの問題は、ただでさえ人口や世帯が減っていく局面では、新築が一つ建つと、その分を超えて空き家が増えていくことである。
「外部不経済(防犯や環境面のコストなど=冨永注)がもたらすマイナス部分、国や自治体で行う空き家対策費が膨大なことを考えれば、新築住宅建設は将来に負債を残していると言える」...では、どうすればいいのか。
「米国もドイツもかつては新築建設が住宅市場の主流だった。しかし住宅数が充足する段階で2次市場である中古住宅市場中心に切り替えている。中古住宅の価格が落ちないことによる資産効果によって消費が活性化するし、住み替え頻度も高まる」
中古住宅の市場が活気づけば、あちこち丸く収まるということか。そして結論は、住宅総量の管理は、国ではなく地域事情に通じた各自治体に任せるべし、となる。