追い込みを食らうとエネルギーが出る
洋楽のロックやポップスを日本語に乗せるという作業は今に始まったことではない。70年代のはっぴいえんどやRCサクセション、サザンオールスターズなど、それぞれが自分なりの「日本語のロック」を築いてきた。その流れの中に彼らもいる。でも、そうしたバンドと違うのは、ウルフルズが関西出身ということだろう。全編に溢れる人情。汗と涙と笑いの庶民性。得意な音楽に特化するといいつつ、これまでやったことのないと思われる都会的なソウルバラード「生きてく」もある。それも「ゆうべ食べた納豆のスパゲティ あれ美味かったなあ」という、納豆嫌いの多い関西人とは思えないユーモラスな生活感のある歌詞から始まっている。
つまり、バンドが成り立つかどうか、このまま継続できるのかどうか、という瀬戸際だったと思われるにも関わらず、アルバムにも3人の言葉にも追い込まれた深刻さは感じられない。
「ある種、追い込みを食らうと、エネルギーが出てくるのかもしれないね(笑)。『ガッツだぜ!!』の時もそうでした。どういう局面にいるのかとかも考えなかったし、無理に楽しもうみたいな悲壮感もなかった。新しい環境の人と楽しくやりました」
トータス松本は、バンド以外にドラマの仕事もある。NHKの大河ドラマ「いだてん」にも主演中だ。彼は、バンドとの兼ね合いについてこう言った。
「ウルフルズを全身全霊でやってるからCMとか役者で使おうと思ってくれるんでしょうし、他の仕事をすればするほど一生懸命バンドをやろうという気になりますね」
どんなアルバムになるのだろう、どんなライブをやってるのだろう。6月14日に「Zepp DiverCity TOKYO」でツアー「センチ センチ センチメンタルフィーバー"飛翔編"」を見た。セッションメンバーに真心ブラザーズのギタリスト、桜井秀俊とMr.Childrenのバンドが長かったキーボーディスト、浦清英を加えた5人編成のバンドは、今までにはないアンサンブルと動きのあるステージを展開していた。
アルバムの中の「リズムをとめるな」は、こんな歌詞だ。
「リズムをとめるな 歌をやめるな」
「涙をとめるな 好きをやめるな」
「ドラムをとめるな ストロークをやめるな」
「グルーブをとめるな セッションをやめるな」
ピンチをチャンスに変えることが出来るかどうか。そう思えるかどうか。残された人達に「何としてもやりたい」という気持ちがあるかどうか。何はともあれ、まずは自分たちが決断することからしか始まらない。
(タケ)