それぞれの空を飛びまわって帰ってくる母艦
アリスは、初期の段階からグループとしての活動とソロ活動を両立させてきているという意味でも稀有な存在だった。当時、彼らが語っていたのは「アリスは母艦」という言葉だ。3人がそれぞれの空を飛びまわって帰ってくる場所。ここに帰ってくる。そういう意味では、今の方がより強い意味を持っていると言えそうだ。
81年の休止以降、最初の再始動は87年、以来6回目。武道館公演は2001年や前回、2013年の全都道府県ツアーの時も行われている。彼らの中でも「帰ってきた」という実感があることが伝わってきた。
年を重ねるということはその人の個性という色が濃くなっていくことでもある。それぞれの生き様や人生模様。三人三様というバランスという意味では、今が一番アリスらしい、と言って良いのではないだろうか。
彼らの曲はヒット曲しか知らない。そういう人のために、レコード会社の枠を超えてツアーの選曲を集めた初のオールタイム・ベストアルバム「ALICE AGAIN 限りなき挑戦-OPEN GATE-THE SETLIST」が発売されている。この日演奏されたのは26曲。そのうち24曲が収録されていた。
タイトルにもなっているツアーに向けた新曲「限りなき挑戦」は、こんな歌詞だ。
「あなたは突然言った 守るべきものが出来たら 無茶をしないで生きること 考えてもいい頃だと」
バンド史上、最年長最大規模となる70才ツアーは、来年まで続いてゆく。それが「無茶」かどうかは、観客が判断することなのかもしれない。
このステージのために今までの時間があった。そう思わせられる夜だった。
(タケ)