国際ダンスフェス『踊る。秋田』
韓国トップクラスを次々と招く

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   自分の中にいる二つの「私」を光と影で織りなす女性デュオ。ひきこもりの少女から湧き出す怒りと対峙する哀切な姿...。今の時代を反映する多様な素材を、独創的で鋭敏なテクニックで表現する韓国の若きダンサーたち。その競演に満場の拍手喝采は鳴り止まなかった。2018年10月、秋田県秋田市で開催された「Asia Festival Exchange」の光景である。

  • 劇作家、演出家、舞踊評論家で知られる山川三太さん。今回、一般社団法人パフォーミング・アーツ・ラボラトリー理事長として助成申請。日韓のダンス文化交流の推進役だ(写真 渡辺誠)
    劇作家、演出家、舞踊評論家で知られる山川三太さん。今回、一般社団法人パフォーミング・アーツ・ラボラトリー理事長として助成申請。日韓のダンス文化交流の推進役だ(写真 渡辺誠)
  • 2018年10月に開かれた『踊る。秋田』の「Asia Festival Exchange」に韓国からダンサーを招聘した。カリムダダンスカンパニー代表、イ・ジヒさんの作品『Shadow Me』(撮影 小阪満夫)
    2018年10月に開かれた『踊る。秋田』の「Asia Festival Exchange」に韓国からダンサーを招聘した。カリムダダンスカンパニー代表、イ・ジヒさんの作品『Shadow Me』(撮影 小阪満夫)
  • イ・ダギョムさんの作品『Everything must be doubted』。韓国の第4回仁川国際舞踊祭では、最優秀賞を受賞している(撮影 小阪満夫)
    イ・ダギョムさんの作品『Everything must be doubted』。韓国の第4回仁川国際舞踊祭では、最優秀賞を受賞している(撮影 小阪満夫)
  • イ・ギョングさんの作品『A broom stuck in a corner』。横浜ダンスコレクションで審査員賞を受賞した作品(撮影 小阪満夫)
    イ・ギョングさんの作品『A broom stuck in a corner』。横浜ダンスコレクションで審査員賞を受賞した作品(撮影 小阪満夫)
  • 今年の『踊る。秋田』には、韓国、シンガポール、福岡からコンテンポラリーダンサーを招聘する。将来的に、台湾、香港と強固なネットワークを築く構想がある(写真 渡辺誠)
    今年の『踊る。秋田』には、韓国、シンガポール、福岡からコンテンポラリーダンサーを招聘する。将来的に、台湾、香港と強固なネットワークを築く構想がある(写真 渡辺誠)
  • 劇作家、演出家、舞踊評論家で知られる山川三太さん。今回、一般社団法人パフォーミング・アーツ・ラボラトリー理事長として助成申請。日韓のダンス文化交流の推進役だ(写真 渡辺誠)
  • 2018年10月に開かれた『踊る。秋田』の「Asia Festival Exchange」に韓国からダンサーを招聘した。カリムダダンスカンパニー代表、イ・ジヒさんの作品『Shadow Me』(撮影 小阪満夫)
  • イ・ダギョムさんの作品『Everything must be doubted』。韓国の第4回仁川国際舞踊祭では、最優秀賞を受賞している(撮影 小阪満夫)
  • イ・ギョングさんの作品『A broom stuck in a corner』。横浜ダンスコレクションで審査員賞を受賞した作品(撮影 小阪満夫)
  • 今年の『踊る。秋田』には、韓国、シンガポール、福岡からコンテンポラリーダンサーを招聘する。将来的に、台湾、香港と強固なネットワークを築く構想がある(写真 渡辺誠)

なるべく小さい頃に本物を見せたい

   秋田県は日本の「モダンダンスの父」と呼ばれる石井漠(いしい・ばく)、日本独自の舞踊スタイル「舞踏=BUTHO」を築いた土方巽(ひじかた・たつみ)という二人の天才ダンサーを輩出した地。彼らの功績を顕彰し、若い世代の育成を目指して、2016年にスタートしたのが「石井漠・土方巽記念国際ダンスフェスティバル『踊る。秋田』」だ。

   いまや秋田の一大国際イベントとなった『踊る。秋田』だが、2018年に「Asia Festival Exchange」が立ち上がり、公益財団法人韓昌祐・哲文化財団から助成を受けて、韓国から3組のダンサーを招いた。なぜ今、アジアのダンサーに注目するのか。

   公演の企画運営を手がける一般社団法人パフォーミング・アーツ・ラボラトリー代表の鈴木明(65)は、「山川三太」(やまかわ・さんた)の名で舞踊評論家としても知られている。山川はその狙いをこう語る。

   「今、アジアのダンス表現が面白いんです。欧米と違う価値観の舞台芸術として、世界で重要な位置を占めている。その中心となるのは韓国です。韓国はアジアで唯一の国立現代舞踊団を持ち、国内で開催される国際ダンスフェスティバルには世界各国のダンサーが集まってくる。我々も韓国とのダンス交流を継続的に推進し、アジアのネットワークをきちっと構築しようという試みなんです」

   秋田市生まれの山川は、地元の子どもたちに託す思いもあった。もともと演劇の道を志し、18歳で上京。山川は俳優養成所へ入所した。そこに集う東京の同期生は幼少の頃から祖父母に連れられ歌舞伎や寄席へ行き、クラシックバレエやダンスを観て育った。生の舞台を観たこともない山川はカルチャーショックを受け、コンプレックスを感じたという。

   「自分も60歳を過ぎて、秋田の子たちに同じ思いをさせたくないという気持ちがあった。だから、なるべく小さい頃に本物を見せたいと話すと、『子どもたちに難しい舞踊を見せても分かりますか?』とよく聞かれる。けれど、『いや、分からなくてもいいんです』と。たとえ理解できなくても記憶に残っていれば、後で振り返った時に大きな財産になると思うんです、と答えている」

公益財団法人韓昌祐・哲文化財団のプロフィール

1990年、日本と韓国の将来を見据え、日韓の友好関係を促進する目的で(株)マルハン代表取締役会長の韓昌祐(ハンチャンウ)氏が前身の(財)韓国文化研究振興財団を設立、理事長に就任した。その後、助成対象分野を広げるために2005年に(財)韓哲(ハンテツ)文化財団に名称を変更。2012年、内閣府から公益財団法人の認定をうけ、公益財団法人韓昌祐・哲(ハンチャンウ・テツ)文化財団に移行した。

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