「エリック・サティ、ジムノペディストです」
今では彼の代表曲として演奏されるピアノ曲、「ジムノペディ」・・・全3曲中、特に第1番が有名で、皆さんも1度は耳にしたことがあると思います・・・は比較的初期、22歳の時の作品であるため、小節線も調号もある「伝統的なクラシック音楽」の記譜法に倣っていますが、それでも十分斬新で、21世紀の現在、やっと時代が追いついたといってもよいぐらいの作品です。そこには、サティの良く言えば「自由奔放さ」、悪く言えば「確信犯的いい加減さ、ユルさ」、があふれており、なにより彼の世界を知る良い入門作品となっています。ゆるりとした音楽なのに、言葉を超えた、音楽のメッセージ性にあふれています。
親元を離れ、若き無名の音楽家として芸術家のたむろするパリ・モンマルトルに暮らし始め、ピアノ弾きのアルバイトの面接でキャバレーの興行主に出会ったとき、彼は胸を張って「エリック・サティ、ジムノペディストです」と名乗ったそうです。7年在籍したパリ音楽院の旧来のアカデミズムに辟易していた彼がようやくそれらから解放され、自由な都市パリの中で自由人として生きてゆく・・彼の造語「ジムノペディ」には、彼自身にしかわからない、そんな意気込みが込められているような気がしてなりません。
本田聖嗣