言いたいことから短く 松本和也さんが授ける「伝わるプレゼン」の極意

糖の吸収を抑える、腸の環境を整える富士フイルムのサプリ!

つい横道にそれて...

   ごくたまにだが、私も大勢を前に話すことがある。最近のテーマは「どう書けば伝わるか」みたいなことで、それを口頭で伝授させていただく。思えば、「どう話せば伝わるか」を文字で説明している松本さんとは、まるで逆をやっているわけだ。スピーチは素人だから、話術のプロによる指南はありがたい。欠かさず拝読している。

   今回の「いちばん言いたいことから短く話す」という鉄則はよくわかる。新聞記事のイロハも同じ。いつ、どこで、だれが、いかなる理由から、なにを、どのようにしたか、いわゆる「5W1H」を過不足なく「逆三角形」で、つまり重要な順に並べて記すことである。

   実は当コラムの1文目も毎週、ある定型を守っている。つまり...[A(雑誌名)のB(連載名)でCさん(著者名)がD(テーマ)について書いている]...といった具合だ。

   話す場合も同様で、要点を簡潔に連ねていけばいい。そういった理屈は理解しているつもりだが、いざ聴衆を前にすると舞い上がり、ふと横道にそれ、ふらふらと路地裏に入り込み、うまくいかないことも再三だ。開口一番、対面する善男善女の心にグサリと錨を打ち込むようなパフォーマンスを、一度くらいやってみたいものである。

   次あたり、「こんにちは。えー講演の聞き手というものは、皆さん気が短いと申します」と始めてみようか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

姉妹サイト