つい横道にそれて...
ごくたまにだが、私も大勢を前に話すことがある。最近のテーマは「どう書けば伝わるか」みたいなことで、それを口頭で伝授させていただく。思えば、「どう話せば伝わるか」を文字で説明している松本さんとは、まるで逆をやっているわけだ。スピーチは素人だから、話術のプロによる指南はありがたい。欠かさず拝読している。
今回の「いちばん言いたいことから短く話す」という鉄則はよくわかる。新聞記事のイロハも同じ。いつ、どこで、だれが、いかなる理由から、なにを、どのようにしたか、いわゆる「5W1H」を過不足なく「逆三角形」で、つまり重要な順に並べて記すことである。
実は当コラムの1文目も毎週、ある定型を守っている。つまり...[A(雑誌名)のB(連載名)でCさん(著者名)がD(テーマ)について書いている]...といった具合だ。
話す場合も同様で、要点を簡潔に連ねていけばいい。そういった理屈は理解しているつもりだが、いざ聴衆を前にすると舞い上がり、ふと横道にそれ、ふらふらと路地裏に入り込み、うまくいかないことも再三だ。開口一番、対面する善男善女の心にグサリと錨を打ち込むようなパフォーマンスを、一度くらいやってみたいものである。
次あたり、「こんにちは。えー講演の聞き手というものは、皆さん気が短いと申します」と始めてみようか。
冨永 格