消せぬ過去でも 速水健朗さん「バカッターはバカじゃないから厄介」

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得をしているのは誰か

   当方、いわば「社命」で始めたツイッター歴が5年ちょっと。実名アカウントだから、消したい過去の一つや二つはある。ただ、そうしたリスクを上書きするほどの利点がある、あるはずだ、あってちょうだい、と考えるから凝りもせず続けているわけだ。

   私の場合、いちおうメディア業界人なので、ネットの荒海に実名で漕ぎ出すにあたり、それなりの覚悟はあった。他方、一般の方、それも先の長い若い人が「やらかす」と大変だ。何年たとうが実名を検索されたら、若気の至りやら、未熟さゆえの失敗やらが亡霊のようによみがえる。

   事実なら自己責任かもしれないが、身に覚えのないことに尾ひれがついて独り歩き、というケースがままある。砂鉄が鉄矢に化けることは、そんなに珍しくない。

   より大きな世界に目を転じれば、フェイク情報の独り歩き、自己増殖は政治や経済を動かすまでになっている。

   砂鉄さんは、過去を消せないデジタルタトゥーで「得をしているのは誰か」と、最後に読者に謎をかけている。それは、現在進行形で悪さをしている連中ではなかろうか。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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