ゴールデンウイーク前日の4月26日、同日を「風呂の日だ」、「ブロッコリーの日だ」と主張し合い、ツイッターをにぎわせたアカウントがあった。石川・金沢の温泉旅館「川端の湯宿 滝亭(以下、滝亭)」と、同・白山市の農業法人で、農産物の生産・販売業「有限会社安井ファーム(以下、安井ファーム)」だ。
両アカウントはどちらも、プロフィール欄にある登録日は19年1月で運用歴は短い。だが2月20日に行ったプレゼントキャンペーンを皮切りに、毎月26日や、4月1日のエイプリルフールなどに息の合った掛け合いを見せ、ツイッターユーザーを楽しませてきた。次々とユニークなコラボができるその理由は、両アカウント担当者の珍しい縁にある。
エイプリルフール当日は「竜亭」と「安汫ファーム」に変身
「安井ファーム@yasuifarm の中の人は小中学校の同級生でした」
2月20日、滝亭がプレゼントキャンペーンについて説明したツイートにある通り、両アカウントの担当者は小・中学校生活を共に送った同級生。そのため例えば、「攻めている」と感じさせるコラボも可能になる。顕著だったのが、エイプリルフールだ。
4月1日朝、滝亭が「アカウント名から滝の『さんずい』がいなくなり『竜亭』になった、見かけた方は一報を」という趣旨のツイートをすると、ユーザーからは「どこかで見かけました」、「お友達のところに家出したらしいよ」と複数の目撃報告リプライが。実は同時期に安井ファームのアカウント名がひっそりと変化し、「安汫ファーム」になっていたのだ。さらに同日、安井ファームが独自にツイッターに投じた「ブロッコリー」の新名称を決めるためのエイプリルフール用高速ルーレットの選択肢100種の中にもさんずいが紛れ込んでいるという二段オチだった。
ユーザーに存在を認識してもらううえで非常に重要な「アカウント名」を一時的にでも変更できたのは、2人だからこそ可能だったのだろう。
「お互いが相手にないものを持っている」関係
実はこの2人、示し合わせて同時に「中の人」としてデビューしたわけではない。2019年2月にツイッター上で「再会」したばかりなのだ。
J-CASTトレンド記者が両アカウントにそれぞれ電話取材を行ったところ、2人は小中学生時代にはほとんど一緒に遊んだことがなかったという。だが中学卒業から約4年後、滝亭担当者が当時勤めていた居酒屋を安井ファーム担当者が偶然利用したことで再会。2度目は18年夏過ぎ、お互いに別の知人を訪ねて足を運んだアパートの廊下でばったり。そして3度目はツイッター上で出くわした。滝亭担当者はこう明かす。
「その頃、流行らせたい一心でよくツイートしていた『#旅館あるある』というハッシュタグをエゴサーチしていたら、安井ファームがそれを使ってつぶやいているのをたまたま見つけたのです。その時点で彼が安井ファームのフェイスブックを運用していると知っていたので『きっとツイッターの中の人も彼だ!』と思い、すぐ連絡しました」
滝亭は、旅館の風景や食事写真を日々投稿するだけでなく、さまざまな異業種企業とのコラボキャンペーンも複数手掛け、積極的なツイッター運用が特徴だ。アカウント開設から2か月弱でフォロワー1万人突破を達成した実績を持つ。
連絡を受けた安井ファームは「驚いたし、テンションも上がりました。地元とはいえ、他の同級生とは誰ともリアルでもネットでも再会していないので」と語った。社員旅行中の宿泊先で、湯上りにツイッターを開いたところハッシュタグ「#旅館あるある」を見つけたため便乗してツイート。すると突然、滝亭担当者から「お前、安井ファームツイッターの『中の人』か?」と電話があったのだ。
「当時は彼が滝亭に勤めていると知らなかったので、すごい偶然です。日々手探りで広報活動に励んでおり、不安を感じていた矢先だったので、この時に彼と再会できて前向きな気持ちになれました。自分が歩んできた道は正しかったのだと」
安井ファームは、収穫された大量のブロッコリー写真やブロッコリーを使った料理レシピなどの投稿が特徴だ。例えば「4月20日は #郵政記念日 ということで、ブロッコリーの画像をお届けします」など、ブロッコリーの画像付きツイートで毎朝その日の記念日を紹介し、ブロッコリーとは関係なさそうな日でもユニークにブロッコリーを印象付けている。
同級生への思いについても尋ねた。滝亭担当者は「アイデア力に富んでいる素敵な人」と評し、「尊敬です」の一言で締めくくっていた。安井ファーム担当者は「友人でありライバルです」と笑い交じりに対抗意識を見せつつも、
「お互いが相手にないものを持っているので、2人がそれぞれの力を発揮できれば、今後もすごいことができそうです。例えば自分はルーレットなどの仕掛けを『作る』こと、彼はその仕掛けを上手に『使う』ことが得意ですから」
と話していた。