「世界で最もサステナブルなリゾートを」 メルコリゾーツが日本で目指すIRの形

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   「IR」(統合型リゾート施設)は、日本では「カジノ」に限定した議論がされがちだ。運営側は、どう考えているだろうか。

   世界的IR事業者「メルコリゾーツ&エンターテインメント」が2019年4月15日に発表した新サステナビリティ戦略について、話を聞いた。

デニス・チェン最高サステナビリティ責任者(左)と、フレデリック・ウィンクラー上級副社長
デニス・チェン最高サステナビリティ責任者(左)と、フレデリック・ウィンクラー上級副社長

サステナビリティは「私たちにとって『コミットメント』」

「サステナビリティというのは、単にプレスリリースの中で話をしている表面的なものではなく、私たちにとって『コミットメント』、つまり決意であり約束事です」

   フレデリック・ウィンクラー上級副社長は、冒頭からこう強調した。

   IR実施法が成立した日本では、今後IR事業者の選定が本格化する。マカオに本社を置くメルコリゾーツだが、ローレンス・ホーCEO(最高経営責任者)は幼少期の来日が原体験となって以来、300回以上日本を訪れている大の親日家。日本での開業には「これまでで最高のIRにしたい」と同時に、「世界で最もサステナブルなリゾートをつくりたい」とも話しているという。

   同社が現在、あらゆる事業で最重要視しているサステナビリティ。これを具現化する目標として、2030年までの実現を目指すのが「カーボン・ニュートラル」と「ゼロ・ウェイスト」という2つの柱だ。

   「カーボン・ニュートラル」は化石燃料の消費を減らし、施設内で再生可能エネルギー(再エネ)を生成していくことが中心だ。これらを通じてCO2排出量の減少と環境保全を図る。

   再エネ設備の導入事例として、メルコリゾーツがマカオで運営するIRでは、太陽光発電パネルを8000平方メートルにわたって設置している。発電量に換算すると年間770万キロワット。これはマカオ1500世帯の電力を1年間供給できる数値であり、CO2排出量も年間6000トン削減できる。2018年度の電力は「100%再エネから調達した」という。

   電気自動車の導入にも積極的だ。施設間移動に使うシャトルバス、さらに人気のカースタントショー「エレクロン」で用いられる車も電気自動車でまかなわれている。

廃棄物ゼロに向けた「ゼロ・ウェイスト」

   「ゼロ・ウェイスト」は廃棄物ゼロに向けた取り組みだ。廃棄食料の堆肥化や廃棄物のリサイクルを通じて埋め立てゴミをつくらない、さらに、廃棄物の焼却時のエネルギー回収も意味する。

   これを実現するための大きな取り組みのひとつが「廃棄プラスチック」の削減だ。従業員2万人を抱えるメルコリゾーツだが、従業員用施設内では「2019年末までに飲料水用プラスチックボトルの使用を廃止する」。さらにIR内で提供するボトルの重量を26%減少させたことで、プラスチックを年間100トン削減させることに成功した。

   循環経済(サーキュラー・エコノミー)の普及を推進する「エレン・マッカーサー財団」が国連環境計画と共同して進めるプラスチック削減の取り組み「新プラスチック経済グローバル・コミットメント」に、IR事業者としてメルコリゾーツが初めて加わった。

   「水」の効率的な利用にもこだわる。節水トイレ・節水シャワー、雨水回収システムなどを導入しているほか、メルコリゾーツのアクロバット水上ショー「ザ・ハウス・オブ・ダンシング・ウォーター」ではIR内のプールの水を再利用。独自の高性能濾過システムを採用することで、「半永久的に再利用することが可能になっている」という。

   このような取り組みを着実に進めていくため、同社には「幹部サステナビリティ委員会」という専門機関を設けている。四半期に一度委員会を開き、サステナビリティの目標に対する進捗状況の報告と、今後に向けた施策を議論している。

「アジアにおける循環経済のリーダーになることを目指す」

   同社が徹底してサステナビリティにこだわる理由を、ウィンクラー氏は「私たちが最も大事にしているお客様がサステナビリティを必要としているのです」とし、こう続けた。

「日本以外のアジア各国の状況を見てください。タイ、中国、インドネシア、こうした国々の都市では深刻な環境汚染が進んでいます。息もできない状況すらあるのです。

だからこそ、私たちはアジアにおける循環経済のリーダーになることを目指しています。いま紹介した私たちの取り組みは、国際連合が推進するSDGs(持続可能な開発目標)の理念とも一致しています。

現在行っている一つ一つのことは小さいかもしれません。しかし、私たちのように巨大施設を運営する主体が小さな積み重ねを続けることは、結果として大きな成果を出すことにつながります。お客様のIR体験に悪影響が出ない限り、お客様はサステナビリティの取り組みを支持してくださると信じています」

日本人は「非常に環境を重視される方々だと思っている」

   メルコリゾーツのサステナビリティ戦略を統括するデニス・チェン氏は、今後はアジアでも環境を重視した投資が活発化するとの考えを明かしている。

「アジアではまだ、欧米ほど環境に関する投資が盛んではないかもしれませんが、この状況は変わると思っています。私たちがサステナビリティに関するポリシーを日本やアジアで前面に打ち出し、実績を公表していくことで、新たな潮流を生み出していけると考えております」

   まだ「IR=カジノ」のイメージが根強い日本だが、実際はIR施設全体でカジノに要す面積は3%に過ぎない。同社は「残りの97%で何をするか」が大事だとも訴える。日本進出にあたって、こうした「サステナビリティ」の取り組みはどの程度日本で受け入れられると考えるか。チェン氏は最後に次のように語っていた。

「私の目から見ても、日本の方は一人一人が非常に環境を重視される方々だと思っています。たとえばプラスチックのリサイクルにしてもゴミの分別が行われております。日本では普通かもしれませんが、私が住んでいる香港ではゴミの分別が全くされない状況も日常的に目します。日本の方々は本質的に環境・自然に対する尊重を深く持っていると思います。私たちの掲げる理念は、きっと理解を得られるものと信じています」
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