「旅+グルメ」のぜいたく
集英社の女性ファッション誌eclatは、50歳前後が主な読者層とされる。旅行にもグルメにも関心があるマダムたちにとって、パリの美食業界に通じた狐野さんの連載はど真ん中のストライクに違いない。しかも、筆者は読者と同世代の女性でもある。
私がパリに在勤していた2005年、狐野さんはあのフォションで女性初のエグゼクティヴ・シェフに就いた。フォション本店(マドレーヌ広場)の近くに住んでいたこともあり、珍しいお名前とともに、その動向はずっと気になっていた。
一料理人の枠を超えた、食全般のプロデューサーとして活躍する狐野さん。上記の回もそうだが、修業時代からの人脈が「取材者」としての彼女を支えていることは疑いない。料理のプロが、ペンでもトークでも、料理以外の表現手段を手にしたら怖いものなしだ。
料理が趣味だとあちこちで触れ回っている私だが、人様から金を取れるものを供する自信はさらさらない。これからも「見て聞いて、食べて、書く」のみである。
冨永 格