慎重派ブラームスの「作品番号1番」 試行錯誤を重ねたピアノソナタ

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「突然やってきたフィーバー」に飲まれることなく

   それまで、作曲家としては全く無名だった若きブラームスに、突如スポットライトが当たることになります。具体的には、音楽出版社が、この若き青年の作品をなんでも出版しようと提案してきたのです。

   ブラームスは慎重な性格なゆえに、出版する作品をさらに厳選し、以後の作品も年には念を入れて作り上げることになります。そのおかげで、「突然やってきたフィーバー」に飲まれることがなく、活動拠点を、音楽の都ウィーンに移してからも、「ベートーヴェンを継ぐ才能」と世間から評価される大家となってゆくのです。

   ブラームスの時には臆病なぐらいの慎重さは、彼の音楽と、生涯を決定づける大きなアドバンテージだったのかもしれません。

   ピアノソナタ第1番も、第2楽章に、古いドイツの民謡の旋律などを入れる、という試みも行いながら、全体としては、それまでのドイツの伝統的なソナタ・スタイルを守り、見事に壮大なソナタになっています。彼が世に問うてもよい、と判断した最初の作品、新年度のこの時期に聴いてみたくなります。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラ マ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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