一時的なお祭りじゃなくて
オフィシャル・インタビューで吉井和哉は「15年というブランク」についてこう話している。
「いかにもう一度イエローモンキーにならなきゃいけないかっていうことに必死でしたね。やっぱり簡単にはなれないんですよ。この時代にもう一度再集結するのはどういうことなのか?っていう意味をみつけることが重要だった。ただ、集まって同窓会的みたいに懐かしいことをやるなら短期間でいいわけじゃないですか。またずっとイエローモンキーをやりたいわけですよ。一時的なお祭りじゃなくて。それにはどういう楽曲が必要かっていうところでものすごい壁にぶち当たりましたよね。これは相当に甘くないぞと」
新作アルバム「9999」にはこれまでのアルバムと決定的に違う点がある。それはアルバムのために制作された新曲がアメリカでレコーディングされたことだ。彼らを語る時に必ずと言っていいほどに使われていたのが「ブリティッシュロックの影響」である。ロンドンでのレコーディングも何度も行われてきた。イギリスという風土の湿り気や憂いが神秘性につながってもいた。吉井和哉がソロになって何度も向かったアメリカン・ロックの聖地、ロサンジェルスで合宿をしながらのレコーディングだった。当然のことながら、音の質感や抜け、あるいは、スケール感は明らかに違う。堂々たるロックバンドという印象だ。
「細かいことをやっても通用しないんですよね。ドライな質感も、タイミングもおのずと日本とは違う、LAならではのサウンドになった」(ギター・エマ)
「僕自身、再集結してからリズムについての考え方が圧倒的に変わった。いまはまずメンバーとお客さんに心地よさを感じてもらいたい。それをLAでより追求できた。グルーブがどんどん大きくなって絆がますます強くなる瞬間を何度も感じた。大きな財産になりました」(ドラム・アニー)
「『9999』は、驚くほどにバタバタと過ぎて行った再集結からの3年という時間のリアルなドキュメントでもある。昔から応援してくれるファンの人も、解散中にファンになってくれた人も、再集結後からファンになってくれた人も、このアルバムで初めて僕らの音楽を聴いてくれる人にも、そして我々にとっても。誰にとっても平等なニューアルバムです」(ベース・ヒーセ)
イエローモンキーというタイトルには「日本人のロック」という意味もある。以前はどこかに「異端」を思わせたバンドの新しい世界。タイトルの「9999」には、9枚目であり4人が経験してきた「苦労」も込められているという。
人生経験豊かな、それでいて艶やかさを備えた正統派の大人のロックバンド。それこそが日本音楽シーンに今、必要な存在なのではないだろうか。
誰も綴ったことのないバンドストーリー。前代未聞の「試聴会」は、その幕開けのようだった。吉井和哉はステージで「生まれ変わったイエローモンキーを聞いてほしい」と言った。
(タケ)