1回戦 啓新VS桐蔭学園
初出場の啓新vs16年ぶり出場の桐蔭学園との対決。打力に課題を抱えていた啓新だが、桐蔭学園の技巧派左腕・伊禮海斗の攻略に成功した。
一死二塁から3番穴水芳喜がライトへ三塁打を放ち、1点を先制。4番竹原翔の左前適時打で2点目。さらに2回表、9番安積航大が適時打を放ち、3点目を入れる。
しかし2回裏、エース安積が2失点をしたが、3番森敬斗を迎えた。森を三振に抑え、捕手・穴水は思わずガッツポーズ。ここから安積のペースを取り戻していく。
左腕のグラブを高々と掲げていきながら、テークバックをコンパクトにとってリリースに入っていく。常時135キロ~138キロのストレートは角度があり、勢いを感じる。夏には常時140キロ前半は期待できるポテンシャルはあるだろう。さらに120キロ前半のスライダー、110キロ台のカーブを織り交ぜながら投球を組み立てていく。
追加点を入れたい啓新は6回表、一死二塁で7番古川剛がレフトへ二塁打を放ち、4点目。7回裏に桐蔭学園3番森の内野安打で1点を失ったが安積は後続を抑える。
8回裏から啓新は右サイド・浦松巧が登板。三塁側のプレートに立つ。意図としては右打者から背中越し、左打者からは外へ逃げるシンカーをより遠く見えるために投げているという。口ぶりから見ても自信たっぷりだが、投球も自信たっぷり。常時135キロ前後のストレートと切れ味鋭いスライダーで桐蔭学園を翻弄する。また9回表、浜中陽秀の中前適時打を放ち、5対3と点差を広げた。
浦松はぴしゃりと抑え、啓新が初勝利を収めた。啓新の選手たちは表情を見ていても楽しさが伝わってきたが、大会1週間前ほどはどん底の状態だった。3月9日~11日まで行われた「センバツ出場チーム・北信越代表大会直前合宿」では1勝3敗に終わり、「どん底でしたし、監督からは呆れている感じでした」と一塁の浜中は振り返る。そこから選手たちでミーティングを行い、ともに助け合い、ともに褒め、盛り上げるように努めた。
「僕らは無い無い尽くしのチームですから、チームの雰囲気とか、チームプレーとかそういうのを見直しました」(浜中)
甲子園入りすると、雰囲気が良くなったと感じた啓新ナインたち。初戦を終えて、二塁手の幸鉢悠樹は「今のムードは最高です」と笑う。
大会前まで苦しい期間を送った啓新だが、それを乗り越えたことが大きな力となり、初出場ながら堂々とした戦いぶりを見せた。さすが優勝候補・星稜相手に延長15回再試合を演じた底力は伊達ではなかった。