口語体も違和感なく
上記コラムのタイトルは「フォルクスワーゲンは偉いかも」である。私にとってVWのクルマたちは、手堅いがやや退屈というイメージである。もちろん「※個人の感想」であるし、それらの所有者やメーカーの印象ではない。
ところが、エッセイに添えられたビートルTシャツの写真を見ながら改めて文章を読むと、こんな感じも飽きが来なくていいかもと考え直した。私に思い直させたのは、すっきりデフォルメされたデザインか、作家の平易な文章か、よくわからない。
Tシャツに向きそうなクルマといえば、今もハバナあたりで観光用に走る1950~60年代のアメ車である。テールフィンが立った派手なボディラインと、ギンギラギンの原色。すでにクラシックカーだから、もはや成金なんて言われない。その種の「ありそうな」図柄を排し、地味な結論に落とし込むあたり、村上さんのダンディズムなのかもしれない。
それにしても、口語体のくだけた文章と、ノーベル賞候補との落差よ。それこそTシャツとタキシードほどの差といえるが、村上さんの中では、それらが同じ高さ、順不同で、違和感なく並んでいるに違いない。
冨永 格