「初回の攻防が大事です。初回を抑えることが出来れば自分たちのペースで野球が出来ると思います」
試合前、両チームの監督は図らずも同じ内容のコメントを残した。
その言葉通り、初回を無難に乗り切った両チームは、引き締まった守りの野球を展開した。
津田学園の先発は、エースの前佑囲斗。直球は常時130キロ~135キロ程だが、ボールの切れが抜群だった。龍谷大平安の原田監督も「回転数が多い直球で、ポップフライを多く打たされました」と舌を巻くなど、完成度の高い投球で強打の龍谷大平安打線を沈黙させた。
試合前、津田学園の佐川竜朗監督は、エース・前の一冬での成長を口にしており、自信をのぞかせていた。
「練習も学校生活もストイックにやっています。練習も無駄がなく、成績も良いです。彼に託すと腹を決めています」
対する龍谷大平安の先発・野澤秀伍は、キレのある直球をグイグイ投げていた昨秋のイメージとは違った投球を見せる。常時120キロ後半のストレートと、カーブとチェンジアップを両サイドにきっちりと投げ分ける「技巧派」の投球で、津田学園打線を翻弄したのだ。
実は野澤は、大会直前に胃腸炎にかかり、コンディションが悪い中での登板であることを、試合前に原田監督は明かしていた。
体調不良の影響からか、明らかに球の走っていない野澤だったが、見事な投球術でスコアボードに「0」を並べていった。
前、野澤の両投手の好投で、試合は熾烈な投手戦となる。9回を終えても、互いに得点を許すことなく0対0のまま。試合は延長戦に突入した。
決着は11回表、龍谷大平安は一死二塁から、4番・水谷祥平が敬遠されて一死一、二塁となると、ここで打席には5番・奥村真大が入る。「(前の打者より)自分が下と見られて悔しかったので、絶対打ってやろうと思いました」と試合後に語った奥村は、この場面でレフトオーバーのタイムリーツーベースを放った。
その後さらに1点を追加した龍谷大平安は、そのまま2対0で勝利して1回戦突破、そして京都勢春夏通算200勝を達成した。
試合後、龍谷大平安の原田監督は、コンディションが悪い中でも好投を見せたエースの野澤を労った。
「コンディションは良くありませんでしたが、その分力が抜けて丁寧にバランスよく投げれていたと思います。そんなピッチングができるのかと驚きました」
龍谷大平安は、2回戦は4日後の29日に戦う予定となっている。コンディションが回復した野澤が、昨秋のようなキレのある直球をを甲子園で見せることに期待したい。