3月24日、第91回高校野球選抜大会(以下、春の選抜)2日目の第1試合は日章学園高校(宮崎)対習志野高校(千葉)の試合だった。
試合は1回表から大きく動く。「美爆音」と称されるブラスバンドの旋律を背に習志野高校打線が火を吹いた。
先頭の竹縄 俊希が相手の失策で出塁すると犠打で二進。3番の根本 翔吾が右翼へきれいなライナー性のあたりを放つ。二塁走者の竹縄は一気にホームインし、わずか6球で先制点を奪った。1点を奪っても習志野高校打線はとどまることを知らない。
その勢いに押されたのか日章学園高校はボールが手につかない。甲子園の魔物の仕業なのか、それともブラスバンドの美爆音の後押しなのか、失策を重ねてしまう。落球、悪送球、捕球ミスが絡み悪い流れを断ち切ることが出来ない苦しい展開。
結局、習志野高校はこの回一気に7得点。試合開始直後から大きくリードを奪う展開となった。
初回だけを見ると、どれだけ点差がついてしまうのか心配であったが、日章学園高校も春の選抜にやってきた学校である。一方的に打ち込まれてしまう学校ではない。2回表、先頭の根本に安打を許すもその後をしっかりと打ち取り無失点。しっかりと立ち直った姿を見せた。
3回も無失点で迎えた4回表、日章学園高校は再び守備のミスで先頭の根本を出塁させてしまう。無死二塁の場面で続く桜井亨佑はバントの構え。投球は高めに外れボール。その瞬間に捕手の深草 駿哉は二塁へ牽制する。
しかし、この送球が根本のヘルメットにあたり、ボールは左翼方向へ点々と転がってしまう。その間に根本は三塁を蹴り、一気にホームイン。習志野高校はノーヒットで1点を追加し8対0とさらにリードを広げる。
一方の日章学園高校は7回に反撃を開始する。先頭の深草 駿哉のあたりは平凡な遊撃ゴロだったが、捕球時に一塁手の足が離れ判定はセーフ。無死一塁となる。2死後に石嶋留衣、長田直樹が連続二塁打。ミスから失点を許していた日章学園高校が相手のミスにつけこみ、2点を奪った。
しかし、反撃が遅すぎた。日章学園高校は8回、9回ともに2安打を放つも決定打は出ない。そのまま試合は終わり、習志野高校が8対2で日章学園高校を下している。
勝ち上がった習志野高校は2回戦で奥川 恭伸を要する星稜高校と対戦することが決まった。一方、日章学園高校は春夏を通じて甲子園初勝利とはならず。夏に戻ってくることを目指すことになる。
勝負ごとに「たら・れば」は禁物だが、習志野高校は初回の大量得点がなければ試合はどうなっていたかわからない。単純な攻撃力、投手力だけではなく守備のミス、乱れでいとも簡単に勝敗が入れ替わる可能性もある。そんなことを教えてくれたような試合だった。改めて、甲子園の凄さ、怖さを感じたファンも多いだろう。