前がすべると笑いが溜まる オール巨人さんが振り返る「神様が降りる時」

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実力あってのタナボタ

   前がすべるとやりやすい。いじわるな真実かもしれない。お笑いのステージに限らず、結婚披露宴のスピーチや壮行会の送る言葉、企業のプレゼンなどでも経験することだ。

   私は結婚式で「親族代表あいさつ」なるものを2回やった。いずれも前のスピーチから時間が空き、ネタが被るはずもないから、なんとか「大トリ」を務め終えた。前がウケるほどやりにくいという経験則は、多かれ少なかれ皆が共有しているのではないか。

   巨人さんのコラムで光るのは「笑いが溜まる」という表現だ。おそらく、若いころには何度も笑いを「溜めて」しまい、売れてからは溜まった笑いを劇場中に解放してきたベテラン芸人ならではの肌感覚、だとうなった。芸歴の起伏なしには出てこない表現だろう。

   ただ、前がすべるという「幸運」は、パフォーマンスが大ウケする要素の一部でしかない。ここは押さえておきたいが、とりわけプロの舞台ではネタの面白さや話芸あってこその「タナボタ」である。神様はそうそう舞い降りるものではない。

   ちなみに、巨人師匠が「最近では一番の出来」という舞台は、4月27日(土)夜に放送予定という。ご興味の向きは、神が舞い降りた瞬間を自らの耳で確かめられたい。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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