頻繁に旅したアフリカの地を曲に サン=サーンス「アルジェリア組曲」

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分かりやすく快活な作風がもれなく発揮された

   1873年に初めてアルジェリアを訪れた彼は、その好印象から「オリエンタルの夢」という曲を作曲します。1879年に彼自身の指揮のもと、パリで初演されたその作品を聴いた楽譜出版業者のオーギュスト・デュランは、アルジェリアの印象をもとにした曲を、もっと作るようにサン=サーンスに強く勧めます。

   翌1880年。彼の姿はフランス本国の英仏海峡に面した町、ブーローニュ・シュル・メールにありましたが、作曲を続けることを決心したのです。彼の「お気に入りの旅先」であるアルジェの印象は、遠く離れた北仏の地でも、筆を進める情熱を供給するには十分でした。

   最初に作曲した「オリエンタルの夢」を「夕暮れの夢」と改題して第3楽章とし、第1楽章「前奏曲、アルジェの街が見えてくる」、第2楽章「ムーア風のラプソディ(狂詩曲)」、そして第4楽章「フランス軍隊行進曲」を追加して、前4楽章のオーケストラのための「アルジェリア組曲 Op.60」として完成させるのです。第4楽章の題名に「植民地だったアルジェリア」が垣間見えますが、現在では、この楽章は単独で人気が高く、吹奏楽などでも、演奏されます。また彼自身によってピアノ曲にも編曲されています。

   まだ飛行機の存在しなかった時代、地中海を航行していると、向こうに北アフリカのアルジェリアが見えてくる・・・というわくわく感か感じられる第1楽章、現地の民族的な旋律が織り込まれて、アラビア風味が香る第2楽章、地中海の夕暮れが想像できる第3楽章、そして、軽快な第4楽章・・・と明解で、分かりやすく、快活なサン=サーンスの作風がもれなく発揮されたこの曲は、20分強かかる曲ですが、あたかも旅行記を見ているかの如く、楽しめる作品となっています。

本田聖嗣

本田聖嗣プロフィール
私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でピルミ エ・ プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソ ロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目CDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを 務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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