「聴かれる音楽でありたい」
アルバムは12曲入り。去年の4月に出た「満月の夜なら」以降の曲が収められている。東京の業界で目にした現実や今、音楽に対して思っていること。「去年書いた40曲以上の中から選んだ曲」にはシンガーソングライターとしてより自覚的になった23歳がいる。「インディーズ時代も含めれば15歳から書いた曲が200曲以上はある。曲がない、じゃなくて、良い曲が一杯ある幸せな悩み。自分の身の回りに起きること、目から入るものは歌に出来ると思ってますし。曲を作ることに今は悩みがない」と言った。
彼女の曲を聴いてからプロフィールやインタビューの中に出てくる「影響されたアーティスト」を見て素直に納得してしまった。
そこにはビートルズ、浜田省吾、吉田拓郎、尾崎豊、石崎ひゅーい、フリッパーズギター、スピッツ、HYなどの名前が並んでいた。父親が浜田省吾のファンで「家族全員浜省ファン。前回のツアーでもライブ前に浜省の『J.BOY』のライブ映像を流してました」と言った。彼女の曲や歌いっぷりの揺るぎない心地よさは、そうしたアーティストたちが土台になっているからと言えそうだ。とは言え「何々風」という次元にはない。
「真似したくなるような人たちばっかりで、ただただファンです。でも、同じことをやってもしょうがないし、負けたくないぞ、みたいなものはあります」
前作のアルバム「青春のエキサイトメント」の中の「風のささやき」に「僕の居場所はどこだい」という一節があった。メジャーデビュー3年。今は、そのことについてどう感じているのだろうと思った。「消費されている」と感じることはないのだろうか。
「あります。今とかも。とりあえず流行っているから、みたいな。消費される音楽ではなく聴かれる音楽でありたい。そのためにも自分をちゃんと伝えていきたい。居場所はどこにもないかもしれません。家でもないし。芸術という場所にいたい」
デジタル音楽やバンド全盛の中に登場した「懐かしくて新しい」生粋のシンガーソングライター。メジャーデビューシングル「生きていたんだよな」のカップリング「今日の芸術」にはこんな歌詞があった。
「見たもの全てに頷いて 見たもの全てを批判せよ」
新しさと懐かしさーー。
こうして音楽は受け継がれてゆく。
(タケ)