認知症の人の声を聴く――本人も、介護者も楽になる――
今、認知症当事者は、介護される存在という受け身のイメージから、自らの思いや考えを発信する積極的な主体へとそのイメージが変わりつつある。
でも、認知症の当事者自身が、どう思い、どう感じているかを、介護者を含め周囲の者は真剣に聴いていないという。「どうせ何もわからなくなっているのだから」という先入観が邪魔をしている。
本人と介護者の間に距離があると、介護者自身も、次第に擦り切れてくる。一生懸命、介護しているのに、本人は不機嫌になるし、問題行動も増えてくる。疲れてくれば、介護者自身も思わず暴言を吐き、そういう自分に自己嫌悪する。悪循環だ。
著者は、1年にわたる取材を通じて、以下の発見があったという。
「認知症の人たちをめぐるこの旅で、『介護は大変だ』という話はよく聞かされました。でも、認知症の人の思いや本音を聞いてみると、実は家族の持っている情報が間違っているために、自ら介護を大変なものにしているのではないかと思うことがよくありました」
本書は、認知症の人にとっても、介護者にとっても、今日をよりよく生きるために、認知症の人の声に耳を傾けることが何より大切だということを教えてくれる。
JOJO(厚生労働省)