「日本のバンドの代表という意識は全くない」
やはり、去年のドームツアーのステージで彼は自分たちの活動について「皆さんが思ってるよりも険しい道のりを通ってるんじゃないかと思ってます」と言った。
例えば、そうやって全世界を廻るワールドツアーについてもそうだろう。2016年に静岡県浜松市の渚園に2日間で11万人を集めて行われた野外イベントを収めたライブDVDには、前作「AMBITIONS」のレコーディング風景やツアーの様子を記録したドキュメンタリーがついている。ベッドのついたバスで移動し、その合間を縫ってバンドメンバーとスタジオにこもり、外国人プロデューサーと膝を突き合わせて楽曲の内容を決め込んでゆく。
彼が放心したように「心身ともに参っております。疲れる」とつぶやくシーンもあった。
「アメリカのツアーは三段ベッドのバスです。結構、汚いし、揺れます(笑)。揺れるから全く寝れないんで、曲のことを考えます。ヨーロッパのバスは二階建てで綺麗ですね。アメリカは環境は悪いけど、そういうバイブスがあるんで、むしろ自然体でステージには立てます。日本の方が完璧にしないといけないとカッコつけちゃうところがあるかもしれません(笑)」
言うまでもなく日本のポップミュージックはアメリカやイギリスの音楽に影響されてきた。特にロックやジャズはアメリカが聖地だった。美空ひばりや坂本九の時代から、一度はアメリカでやりたいという夢を持たなかった人の方が少ないはずだ。YMOや矢沢永吉、DREAMS COME TRUE、松田聖子、そして宇多田ヒカルに至るまで数多い。でも、それだけの規模でツアーを廻るところまでになった例で思いうかぶのがラテン音楽のオルケスタ・デ・ラ・ルスくらいだろう。X-JAPANもそこまで"トラベリンバンド"には徹していなかった。
「バンドを組み始めた時から海外で活動をしたいという気持ちがずっとあって。その頃から思えば信じられない。でも、信じてやってきたからたどり着けた。どうやって活動していくかという真髄に迫っている感じはありますね」
前作「AMBITIONS」はビルボード誌のロックアルバム・チャートで12位、ハードロックチャートで2位というデータもある。
ロックバンドの総本山でどんな戦いを展開してゆくのか。彼の繊細さも備えたシャウトの美しさと歌いやすいメロディーは、日本人のロックバンドならではだと思うのはひいき目だろうか。日本語まじりの英語の歌詞を英語圏の若者が大合唱する。そんな時代が来た。
彼は「日本のバンドの代表という意識は全くないけど、年下の人たちに自分たちが見せる背中の広さは意識して行きたい。どんどんチャレンジしていって欲しいですね」と言った。
(タケ)