ネタへの配慮と読者サービス
私の連載も「コラム尻とらえ隊」みたいなコンセプトなので大きなことは...いや、むしろ言えると思うのだが、よそ様の文章を引用しての論評は、まさに全人格を問われる行為である。曲解や誤解をできる限り排し、意のあるところを正確にくみ取り、筆者に誠心誠意寄り添い、かつ面白い読み物に仕立てなければならない。
能町さんも心得たもので、小室さんをネタにしながらも慎重に書き進めているのが分かる。コラムの素材である小室文書については大意「弁護士の助言を加味した文面かもしれないが、おおむね本人が書いたものとして扱わせてもらう」との「お断り」つきである。
「元婚約者の方」を「A氏」などにできなかったのかという疑問にも、「犯罪者みたいでイメージが悪い。ほかの呼び方もないので不運といえば不運」と自答している。
そうした配慮をしたうえで、強欲な読者を満足させるのが風刺のプロであろう。私はプロらしい強烈なサービス精神と技術を、コラム本文とは別のところで見つけた。
能町コラムは絵心のある筆者自身の挿絵も名物だ。今回は、NYでわが道を行く小室さんの絵に、「この人自身が『元婚約者の方』であるように思えてしまう...」のコメントが添えてある。こんな「優しげな意地悪」こそがプロの案配だと思う、のです。
冨永 格