急に変えてはいけない習慣 五木寛之さんは年賀状を出したことがない

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「生存確認」なら不要では

   私も2019年の新春のご挨拶を遠慮した。はやりの「賀状じまい」ではなく、親類に不祝儀があったためだが、何を隠そう、できれば「生存確認」のような年賀状はもうやめようかと思っている一人ではある。

   あれは40歳前後の数年間だったか、賀状のデザインに凝ったことがある。プリントゴッコで不細工な「寅」を大量生産し、取材先などに送り付けたのは1998年の正月だった。勤務地が目まぐるしく変わった時期でもあり、住所変更の案内を兼ねていたように思う。

   その年代までは、届く賀状にも転職あり、結婚あり、子ども誕生あり、異動ありと、なにがしかのニュースを含むものが多かった。それが50を過ぎたころから「こちらは相変わらずです」「ぼちぼちやっています」みたいな文面が互いに増える。親の介護話や、老後の趣味を並べたようなものも混じりはじめ、「そろそろいいか」と思い始めた次第である。

   急に習慣を変えてはいけない? 大丈夫、すでに十年ほどかけて賀状の数を減らしてきたからだ。あとは「卒業」を内外に告知するのみ。で、この場をお借りして宣言する。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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