風雲児も基本が命 神田松之丞さんはブレーク後も先輩をコピーして稽古

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自信が育てる大器

   あらゆる表現者は誰かのマネから始めて、誰のマネでもないオリジナルを目ざす。書く、描く、語る、歌う、踊る、奏でる、演じる、操る、創る、魅せる...分野は違っても、一流の表現者は自分にしかできない境地に行き着いて、いちおうの完成をみる。

   ハードルが低い...ゆえに競争も激しい「書く」という表現法にしても、プロとして習熟するまでには基本を固め、それを乗り越える努力が要る。

   「語る」もハードルは高くないが、だからこそアマチュアのレベルと一線を画すのは楽ではない。話がうまいだけの人はいくらでもいる。

   一見型破りな松之丞さんも、基本を外さない努力を日々重ねていると知り、どこか安堵した。一流表現者の多くがそうであるように、天賦の才はあろう。それを開花させるには、基本の身体化と、お客との緊張状態(本番)の場数を重ねるしかない。

   過日の朝日紙面に、長老の芸能評論家、矢野誠一さんがこんな評を寄せていた。

〈松之丞の高座に触れるのは確かこれが4度目になるが、その度ごとに大物感が増しているのは、人気に支えられた自信のせいだろう...精いっぱいラッパを吹こうとする姿勢に好感が持てた。久々に現れたこの大器、順調に育って欲しいと思う〉

努力で大きくなり、自信でまた大きくなる。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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