渋谷はマンハッタン
アルバム「Yu Are Something」が、それでいて単に海外レコーディングアルバムに終わっていないのは、後半に舞台が東京に移ることだろう。6曲目の「So Da Raw」にはラッパーのサイプレス上野、9曲目「Tokyo Loves」には東京のヒップホップの先駆け、Zeebraが参加、舞台が「渋谷」に移って行く。ロスと東京での音をミックスした曲もある。それが今の東京発のポップミュージックだと言っているようだ。
「僕の中では渋谷はマンハッタンなんです。自分を証明しないといけない。高知から上京してきた頃も若かったから、ともかく目立とうとして顰蹙かってました。マンハッタンもそうやって生き残ろうとする人が集まってくる。ジャケットではその両方をイメージしました」
一枚のアルバムに刻まれた「洋楽と邦楽」、そして「時間と空間」。「東京から公共交通機関で一番遠いとされる土佐清水」(さかい)で音楽に目覚め、独学でここまでたどり着いたシンガーソングライターのメジャーデビュー10年目。アルバムの12曲目はJ-POPの超売れっ子プロデューサー、蔦谷好位置との共作「最後栄光」。歌詞の中の「最後に笑え人生は 片道切符の旅 引き返せない道を突き進んで行け」は、彼自身の生き方そのものだろう。
彼は、出来上がった時の心境を「助かった、あー、出来た、助かったと思いました」と言った。このアルバムが出来たからここから先も生きていける。
人生を賭けたアルバムというのはこういう一枚を言うのだと思う。
(タケ)