仕事への無関心が経営の大敵 「その道の達人」を目指して

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読書、経験、観察の積み重ねからブレイクスルーが起きる

   説得力のある洞察とはどのようなものだろうか。

   私たちの毎日は、秩序や確実性を求める傾向があるが、積極的にわからない状況を続けることによって洞察が磨かれる。一切の先入観を持たないで新しい知識や洞察に到達しようとする。幅広くデータを集め収集・整理するうちに、複数の理論が見えてくる。雑多でつかみどころのないデータから真の創造性が生まれる。読書、経験、観察の積み重ねからブレイクスルーが起きるのである。その到達点は、美的な判断。

   最も美しいもの、最も喜びが感じられるもの、最も強力なものはなにか。この解釈はアルゴリズムにはできない。達人は人生をかけてこの解釈の技を追求し世の中を理解しようと努めているのだ。

   ナパ・バレーにカリスマといわれるワイン醸造家がいる。40年をかけ、科学的知識に加えてベテランの智恵を学んだ。理想のワインをつくるために。彼は、ぶどうの樹を表現する際に土壌のpHや塩分濃度ではなく、年を重ねて賢いとか気品があると表現する。おいしいワインに関心を持ち続けたからこそデータや知識がつながった。

   企業や組織が問題を抱えているとき、しばしば無関心が蔓延している。経営幹部が組織のミッションの意味を見失ないニヒリズムに陥ってしまうのだ。仕事に関心をもたなくなると「正しさ」は見えても「目指すべき目標」は見えなくなってしまう。ひとりひとりの関心を褒め、その道の達人になるように努めることによって、社員も組織もどんどんと成長する。

   そのために人文科学の分野は理想的なトレーニングであり喜びや楽しみをもたらしてくれる。歴史や芸術のたしなみは、新しい現象や厳しい競争に対応するのに役に立つ。専門教育のレベルを高めるとともに、人文にもっと自由に、もっと深くひたることが、求められている。

ドラえもんの妻

【霞ヶ関官僚が読む本】現役の霞ヶ関官僚幹部らが交代で「本や資料をどう読むか」「読書を仕事にどう生かすのか」などを綴るひと味変わった書評コラムです。

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