JJ 2月号の「Think about Features 25歳のレディたちへ」で、作家の山内マリコさんが結婚のタイミングについて語っている。
光文社のファッション誌で、誌名は「女性自身」に由来する。その別冊から月刊誌として独立して40年、いわゆるコンサバ系の女子大生やOLの間で揺るぎない地位を築いた。
巻頭を飾る山内エッセイは上記で14回目となる。
「将来の夢を訊かれて『結婚』と答える女性はどのくらいいるんだろう?」
こう書き出した山内さんは、学生時代は「自分はどんな仕事がしたいのか」に関心があり結婚はその外側だったこと、しかし20代半ばのある時期から「結婚したい病」に襲われたことを告白する。「まさに熱病みたいな破壊力」だったと。
「あれは、大学を卒業して社会に放り出されたばかりのころ。経済的にも精神的にも自立するのが難しくて、いっそ誰かに寄りかかれたらなぁ~、なんて考えが頭をよぎったり...」
同級生の結婚話も届き始め、山内さんに結婚はゲンジツとして迫ってきた。
「独身は、たとえるなら一人乗りの小舟のようなもの。オールを手で漕ぐのは疲れるし、心細くて、ちょっとした波にもさらわれてしまいそう。一方、結婚は、男性が操縦するクルーザーに乗せてもらっている状態。そりゃあ『いいなぁ~』と思ってしまうわけです」
乗せてもらう人生
「結婚というものを意識しはじめたとたん、性格が歪んで、心が荒んで、内面がどんどん醜くなっていくんです。人の幸せをうらやんだり、男に気に入られようと媚を売ったり」
自分のあさましさに辟易した山内さんだが、29歳から付き合った男性と34歳で結婚する。そして、20代で結婚できなかったことを「わたしの場合、それがよかった」と顧みる。
「少なくとも自分の小舟で海を渡れるようになってから、つまり経済的にも精神的にもちゃんと自立できた上で、相手の船とドッキングする形で結婚できたから」
20代で仕事やキャリアにつまずき、道半ばの夢を男に丸投げする形で結婚に逃げ込んでいたら...山内さんは想像する。
「相手のクルーザーがどんなに居心地悪くても、我慢するしかない人生になっていたかもしれない。自分の心を殺して、クルーザーの持ち主の顔色をうかがうのは辛いことです。けど、人の船に『乗せてもらう』って、そういうことです」
山内さんは、大海原を小舟で漂っていた25歳の自分を褒めてやりたいという。「よく耐えた」と。「苦しかったけど、その分きらきらした時間でした」