小出しで予算も少ない少子化対策
少子化問題は、いわゆる1.57ショック(ちょうど平成がスタートした1989年の合計特殊出生率が、過去最低だった丙午(1966年)の1.58を下回った事態)以降、認識されるようになった。しかし、著者曰く、その後採られた対策は、保育整備をはじめ小出しで予算も少なく、高齢化対応として本格的な対策が採られた介護保険と比べて見劣りするものだったという。
我が身を振り返り、評者自身も30数年にわたり社会保障に携わってきたが、子ども関連の業務を担当していた期間は3年ほどに過ぎず、圧倒的に多くの時間とエネルギーを介護、医療、年金といった高齢化対応に費やしてきた。
実際、日本の社会保障給付費(118兆円、2016年度)のうち、年金は57兆円、医療は38兆円、介護は10兆円であるのに対し、子ども関係は6兆円である。
著者の言葉を借りれば、「1.57ショック以来30年近くにわたって、常に少子化対策や家族政策を強力に推し進める原動力、政治的リーダーシップに欠けていた」、「不都合な現実から目をそらし、長期的な戦略のないままに、短期的な人気取りのような政策が打ち出され、先の見えない霧の中を、日本は少子高齢化と人口減少への道をひたすら進んでいる」というのだ。