広島東洋カープファンが集う居酒屋「広島お好み焼Big-Pig神田カープ本店」(東京都千代田区)。扉を開けると、ひとりの大柄な男性が記者を待っていた。カープの「25番」のユニホーム。今季で現役を引退した......え、まさか、本物?
「どうも初めまして、新丼(あらどん)です」
丁寧に名刺を差し出すこの人物――。カープの新井貴浩さんと同じ身長189センチ、体重102キロのそっくりさん、「等身大ベースボールプレイヤー」を名乗る新丼貴浩さんだ。
新井さん本人から「似てますね、ほんとに」
ベテランになっても、1塁ベースまで全力疾走。新丼さんは、どんなことにも一生懸命な新井さんが大好きだ。チームのリーグ3連覇に貢献しつつも今シーズンで20年の選手生活に終止符を打った。引退発表時はショックを受けたものの、「会見での言葉に人柄が出ていた」と話した。
「これからのカープのことを考えたときに、今年(引退するの)がいいんじゃないかと考えました」
引退会見で新井さんが語った言葉だ。新丼さんは、「ベンチ入り人数に制限がなかったら引退していなかったのではないか」と考えた。だが、「カープのため」もっといえば「野球界のため」ならば、個人を犠牲にするだろう新井さんらしい決断だと受け止めた。
実は本人との対面は、1度しかない。2016年12月、東京・表参道で新井さん、カープOBの山本浩二さん、野村謙二郎さんのトークショーが行われた際だ。3人と握手できる抽選に当たった。整理番号は50人中7番、前方で順番を待っていた。
トークショーの冒頭で、山本さんは「東京にこんなにカープファンいたんやね~」と観客を見渡し、新丼さんの姿を発見すると「あ!新井にそっくり!」と驚いた。すぐに隣の本物の新井さんを見て「違うか」とつぶやくも、もう一度新丼さんを見て「似てるよ~!」と言い直した。新井さんも「似てますね、ほんとに」と笑顔だった。
本来は握手だけだが、特別にツーショット写真も撮ってくれたという。時間の関係で会話はできなかったが、「大興奮でした」とうれしそうだった。