対戦型ゲームをスポーツ競技と捉えた「eスポーツ」の"元年"と呼ばれた2018年。新語・流行語大賞にもノミネートされ、知名度が高まっている。
ゲーム雑誌「ファミ通」を発行するGzブレインの調査によれば、18年の日本国内のeスポーツ市場は48億3000万円と前年比の13倍だった。注目度の上昇により大会のスポンサー費が急増したためで、来年度は59億7000万円と予測する。J-CASTトレンドは、コナミデジタルエンタテインメント・プロモーション企画本部の車田貴之副本部長に、eスポーツの現状と見通しを聞いた。
欧米中心に大会開催、「パワプロ」は福井国体に採用
コナミでは、業界内でeスポーツが盛り上がり始めた2016年、社内に「eスポーツメディア推進室」を立ち上げ、本格参入した。
以降、国内外でファンの多い「ウイニングイレブン(ウイイレ)」「実況パワフルプロ野球(パワプロ)」「遊☆戯☆王」の3タイトルを柱に、規模の大小はあるが積極的に大会を開催している。海外では、eスポーツが盛んな欧米が中心だ。車田氏が手ごたえを感じたのは18年からで、「リアルのスポーツとeスポーツのイメージが近づき、eスポーツがスポーツ競技と認識されるようになった」とする。
それを証明するように、18年8月にインドネシアで行われたアジア競技大会では、eスポーツが初の公開競技となった。10月には福井国体の文化プログラムで「パワプロ」が採用され、11月にはコナミと日本野球機構が共同開催する「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ」が発足した。同プロリーグでライブ配信された開幕戦「読売ジャイアンツ対阪神タイガース」は、ユーチューブで20万再生を記録している。
「弊社では2001年からeスポーツの大会を開いたりするなど、地道に取り組んできました。それらが徐々に実ってきたと思います。メディアからの取材依頼や弊社IP(知的財産、ゲームタイトル)のeスポーツ活用に関する問い合わせも、2018年から急増しました」(車田氏)
コナミでは01年に欧州で「ウイイレ」の地域大会を開催し、以降その規模を拡大させ、現在は世界大会として毎年実施している。タイトルのファン増加とともに大会の注目度も高まっていき、18年の世界大会は米州、欧州、アジアで実施し、成績上位選手を招待した決勝大会はスペインのバルセロナで行った。ファンが主催する大会に赴き、大会運営のサポートも積極的に行ったという。
リアルのスポーツ同様に興行として成り立つには
eスポーツの認知度が高まり、スポーツ競技と認識されるようになった点では、18年が「開花」した年だったと言えよう。だがコナミは、事業の柱となるような規模に育てるのはこれからで、現在はまだ投資段階と位置付ける。
eスポーツでは「スポンサー・広告収入」「チケット販売」「グッズ販売」「放映権料」「著作権許諾収入」が主な収益源だ。現状ではこれらの収入が、リアルのスポーツと同じように興行として成り立つほどではない。
「まずは大会の主催を通じて、IPのファン、視聴者、競技人口を増やして競争力を高める。そうすれば競技として見ごたえが出てきます。競技レベルや人口がある程度整ってから、ビジネス面の段階に入っていけると考えています」
と車田氏。加えてゲーム開発の強化も重要だ。
「eスポーツの競技や大会だけが先行してもだめで、結局は競技タイトルありきです。今後は競技性をより高め、観戦するだけでも楽しいeスポーツ向けのタイトル作りも進めていきます」