おしゃべりな母 中嶋朋子さんは会話を手がかりに親子関係を修復した

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母娘の距離感

   母になったことも、娘だった過去もない私には、母親と娘の関係はほとんどミステリーの世界といっていい。たいていドライで、どこか他人行儀でさえある父親と息子の関係に比べ、母娘の距離感はずっと近そう、と想像するだけだ。一般に親子関係の濃淡は、濃いほうから母娘>母息子>父娘>父息子ではなかろうか。

   中嶋さんの場合、「女手一つで私を育ててきた母」との関係性は、世間なみ以上に濃いのかもしれない。濃密だから摩擦も多いけれど、離反しそうで離れない、互いに気になる、そして「長き攻防戦」の末に娘が仕掛けた策が奏功する、というストーリーである。

   娘は、習慣化した母親のネガティブ思考に付き合わず、それを「切り返す」ことで心の安定を得る。この大団円は当然ながら、すべての母娘に当てはまるわけではない。

   親子の関係は千差万別だ。それぞれオンリーワンの対処法を見つけるまで、われわれ世代の耳に刻まれたフレーズでいえば...♪なかよくケンカしな♪ である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。
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