「ニヒリズム」を超えようとするロック
2011年の東日本大震災の後、多くのバンドやアーティストがチャリティーや支援のための活動を行った。その中でも自ら手作りの新聞「Future Times」を発行するなど音楽に留まらないジャーナルな動きをしていたのが後藤正文だった。今もバンドとは別に地道な活動を続けている。「ホームタウン」は、そうした背景もありつつメッセージに流れない想像性豊かな詩的な言葉で綴られている。情景的であると同時に時代的。様々な意味が込められている。
果たして、世の中は良くなっているのだろうか。どちらに向かおうとしているのだろうか。そんな問いに正面から答えられる人がどのくらいいるだろう。そして、そのことに責任を持とうとしている人たちもだ。
安易なことは歌えない。でも、こんな世の中に流されたくない。失意や挫折を思わせる言葉の中に見える勇気や希望。ロックバンドとしての心地よさと抑制された心情がこだわり抜いた重低音に託されているように思った。
平成最後の年末が終わろうとしている。
この30年、何が始まって何が終わろうとしているのか。そして、次に待っているのはどんな時代なのか。
アルバム最後の曲「ボーイズ&ガールズ」はこう歌っていた。
「We've got nothing
It's just begun」
僕らは何も手にしていない。
はじまったばかり。
「ニヒリズム」を超えようとするロックというのはこういうアルバムを言うのだと思う。
(タケ)