ダブルミーニング的面白さのある詩
ロックバンドの命はそうした「音」だけではない。ミュージシャンが口にする言葉を使えば「タイム感」である。ベースとドラムのタイミング、ギターのカッティングの呼吸。「息が合う」ということ以外の何ものでもない。アルバムの最初の印象はバンドサウンドの心地よさだった。彼はこうも書いている。
「機械的にではなく、俺たちのタイミングで、俺たちの演奏で、アジカンならではの演奏と楽曲なのに音がユニーク、みたいなところを目指した」
アルバム「ホームタウン」に感じた「諦めないこと」はそうしたロックバンドの「音」だけではない。むしろ歌の内容にこそそれを感じたと言って良い。
ASIAN KUNG-FU GENERATIONは、後藤正文(V・G)、喜多建介(G・V)、山田貴洋(B・V)、伊地知潔(D)。96年、大学の軽音楽部の仲間で結成された。メジャーデビューは2003年。今年は15周年にあたる。ライブでの発信力と確かなバンドサウンドはフェスには欠かせない存在になっている。
特に、同時にソングライターでもある後藤正文の書く言葉の詩的世界は彼らの大きな特徴になっている。状況を表現する比喩の抽象性と抒情性、言葉の裏にいくつもの意味が込められているようなダブルミーニング的面白さは今のロックバンドの中でも屈指のものがある。「ホームタウン」は、そういう意味の傑作に思えた。
例えば、一曲目の「クロックワーク」で歌われる「時計」や「文字盤」「歯車」「振り子」などの言葉は時の流れの中で「終わったこと」や「過ぎたこと」として顧みられなくなることへの抗いのようにも思える。タイトル曲の「ホームタウン」には、こんな一節もある。
「こんなことして何のためになるんだ
そんな問いで埋め尽くされてたまるかよ
ねえ そうだろ」