高齢で創作意欲が激しく衰えていたが...
バックスが、この「奥様、起きてパイを焼いて」を作曲したのは1945年のことです。第二次大戦で英国は疲弊していましたが、高齢のバックスも創作意欲が激しく衰えていました。この時期、ほとんど彼は作曲することが無かったのです。しかし、この年から始まったイギリスの超有名音楽祭「BBCプロムス」の発案者である、音楽学者・プロデューサーのジュリアン・ハーベッジと夫人のアンナ・インストーン夫妻に招かれ、素晴らしいパイをごちそうになり、彼の創作意欲は高まったのです。彼にとっての、小さな「クリスマスの奇跡」となったのかもしれません。3分に満たない小品ですが、躍動感のある素朴な旋律から始まるこの曲は、クリスマスのごちそうを待ちわびる子供たちのような・・・クリスマスキャロルは多くの場合、子供たちの澄んだ声によって歌われるのです・・・ウキウキした気分にさせてくれる、そんな雰囲気を持っています。
本田聖嗣