「奥様、起きてパイを焼いて!」 作曲家バックスに起きた「クリスマスの奇跡」

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   比較的「真面目な音楽」ととらえられがちなクラシックですが、今日はちょっとユーモラスな題名の曲を登場させましょう。原題は「O Dame Get Up and Bake Your Pies」、奥様、起きてあなたのパイを焼いて下さい!」といったところでしょうか。

  • 『女王の音楽師範』に任命され(1942~1953)、サー・アーノルド・バックスとなっていた晩年の彼の肖像
    『女王の音楽師範』に任命され(1942~1953)、サー・アーノルド・バックスとなっていた晩年の彼の肖像
  • 『女王の音楽師範』に任命され(1942~1953)、サー・アーノルド・バックスとなっていた晩年の彼の肖像

イングランド北部のクリスマスキャロルが題材

   この一風変わった題名の曲はピアノの独奏曲で、作曲したのは英国の作曲家、アーノルド・バックスです。バックスは1883年ロンドンの生まれ、両大戦の期間を生き抜き、1953年に亡くなっています。ピューリタン革命の影響でしょうか、バロック時代から近代になるまで英国は音楽家をあまり輩出しませんでしたが、エルガー、ヴォーン=ウィリアムズ、ホルストといった人たちが現れた19世紀後半から再び英国発の音楽が盛んに作られるようになりました。作曲家にとって代表作品、となるのはオーケストラのための「交響曲」ですが、バックスは、両大戦間も活発に作曲し、計7曲もの交響曲を完成させ、交響曲作曲家として認識されていました。

   しかし彼は、ピアノ作品、中でも「性格小品」と呼ばれる小さな、特徴的なキャラクターをもったユニークな作品も多く残しています。

   今日の曲も、そんなレパートリーの一つで、イングランド北部のクリスマスキャロルを題材にしています。この面白い題名は、クリスマスキャロルのオリジナルの題名なのです。クリスマスキャロルとは、教会での讃美歌などとは別に、人々の間で歌い継がれてきたクリスマス関連の素朴な歌で、クリスマスシーズンのパーティーの集まりなどで歌われるレパートリーです。中世から連綿と続く歴史を持つ曲も多く、19世紀に魅力が再発見され、記譜されるとともに、さらにそこから多くの作曲家がインスピレーションを得ました。

本田聖嗣プロフィール

私立麻布中学・高校卒業後、東京藝術大学器楽科ピアノ専攻を卒業。在学中にパリ国立高等音楽院ピアノ科に合格、ピアノ科・室内楽科の両方でフプルミエ・プリを受賞して卒業し、フランス高等音楽家資格を取得。仏・伊などの数々の国際ピアノコンクールにおいて幾多の賞を受賞し、フランス及び東京を中心にソロ・室内楽の両面で活動を開始する。オクタヴィアレコードより発売した2枚目のCDは「レコード芸術」誌にて準特選盤を獲得。演奏活動以外でも、ドラマ・映画などの音楽の作曲・演奏を担当したり、NHK-FM「リサイタル・ノヴァ」や、インターネットクラシックラジオ「OTTAVA」のプレゼンターを務めるほか、テレビにも多数出演している。日本演奏連盟会員。

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