刺青裁判に思う 里見清一さんは「なくてもいいもの」だからこだわる

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医師ゆえの説得力

   おそらく上記コラムの原稿締め切りに前後した大阪高裁の控訴審判決(11月14日)は「医療を目的とする行為ではない」と被告の主張を認め、逆転無罪となった。さらに、彫り師に医師免許を求めれば、憲法が保障する職業選択の自由との関係で疑義が生じるとし、彫り師のプロ意識にも一定の理解を示す内容だった。

   筆者(本名・國頭英夫さん)は日赤医療センターの化学療法科部長。がん治療が専門で、この作品でも「私なんかが(刺青を)やろうとしたら、絵の巧拙以前に、それこそ『皮膚障害を起こす』危険がある」とユーモアを交えて触れている。

   タトゥー裁判のトピックを織り込み、自らの主張を込めた里見エッセイが説得力を持つのは、やはり現役医師という肩書ゆえだろう。素人による凡百の論評を超えて、「そんなアホな、私らできませんて」という一蹴は強力だ。

   「なくてもいいもの」だからこそ、そっとしておけ。納得の診断である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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