「最近試合の中でのガッツポーズが増えていますね」
記者に指摘されたのは卓球Tリーグ、「琉球アスティーダ」の丹羽孝希選手。チームのエースは少し微笑みながら、答えた。
「勝てそうなときにやりますね。10-6になったときとか」
報道陣から、ドッと笑い声が起きた。
「1試合で数回しからやらない」
卓球の新リーグ「Tリーグ」の男子公式戦、「琉球アスティーダ」と「T.T彩たま」の試合が2018年12月10日、東京・アリーナ立川立飛で行われた。アスティーダのホーム試合が東京都内で開催されるのは初めてだ。
試合は、ホームの観客からの熱い声援を受けて、エースの丹羽孝希選手が勝負を決めた。
丹羽選手はほかの選手に比べ、控えめにガッツポーズをする。勢いよく拳を高く突き上げる選手が多い中、腕は腰の当たりまでがほとんどだ。この日は長いラリーを制したとき、勝利を収めた瞬間に見られた。
「(試合の)出だしからはやらないので。勝負どころの1本をとったとか、自分がほしい1点をとったときとか。1試合で数回しからやらないと思います」
本人はこう話す。琉球の外間(ほかま)政克監督は、こうした丹羽選手のガッツポーズは、ファンサービスにも繋がっていると見ている。
「先日(12月3日、4日)の沖縄での試合で、観客にアピールしている場面もあった。そこは本人のTリーグに対しての思い入れがあるのかもしれないですし、チームへの愛着も生まれてきているのかもしれません。たしかに最近多いし、ファンの人は喜んでいると思います(笑)」
「非常に苦しいなと思った」
丹羽選手の活躍もあり、マッチカウント3-1で勝利を収めた琉球。これで彩たまとの対戦成績は4勝1敗となった(12月10日終了時点)。
琉球は、第1マッチ(試合)のダブルスではわずか20分足らずで落としたものの、その後シングルス2つをとり、マッチカウントを2-1とした。丹羽選手は第4マッチで、チョン・ヨンシク選手と対戦した。今年の4月~5月にかけて開催された世界卓球選手権スウェーデン大会(団体戦)では、韓国代表として出場し、シングルスで張本智和選手、水谷隼選手に勝利した強敵だ。丹羽選手自身、2月のITTFチームワードカップロンドン大会で敗れている。
この日、丹羽選手は2ゲーム(いずれも11-8)を先取するも、3ゲームは13-15で失った。11-11となった際には足がもつれてポイントを落とし、しゃがみこむ場面もあった。4ゲーム目も8-11で取られる。決着戦となる5ゲーム目は6-6からスタートする。7ポイント目を先に取った丹羽選手が始終リードし、最終的に11-8で勝利をものにした。直後にはガッツポーズも見られた。しびれるゲームを制した後のガッツポーズも、いつもとそれほど変わらなかった。
試合後のインタビューでは、激闘をこう振り返った。
「3ゲーム目をとられて非常に苦しいなと思った。自分の戦術に慣れられて、向こうがミスをしなくなった。5ゲーム目は出だしにポポポンと取れたのでよかった。6-6(スタート)だと運の要素もあるので。0-0からだったら勝つのは難しかったのかなと思いますね。すごく強い相手なので、勝てたことは自信になります」
琉球監督「打倒木下」の思い明かす
12月10日の勝利で、Tリーグのシングルスでは6連勝となった丹羽選手。チームは2位(勝ち点15)に浮上した。といっても、現在は木下マイスター東京(勝ち点29)が首位を独走中で、3位の岡山リベッツ(勝ち点14)、最下位のT.T彩たま(勝ち点12)とは団子状態だ。
「(リーグの1位と2位チームが戦って優勝を決める3月の)プレーオフに出たい。どちらかというと、木下よりもほかの2チームに勝ちたい気持ちが強いですね。木下がぶっちぎっているので、ほかの3チームの争いになると思います」(丹羽選手)
一方で、琉球の外間監督は「打倒木下」の思いもある。木下には4連敗中(未勝利)だ。試合後、「まだ木下さんに勝ってないので、それで2位というのもどうかと......。うちがたくさん負けているので、とにかく1つでも勝ちたいですね」と意気込みを見せた。