「安泰世代」に対してのアンチ
「一段と自由になった」と思ったもう一つの要素が、他のアーティストとコラボレーションしていることだ。ONE OK ROCKのヴォーカルのTAKA、今、注目のシンガーソングライター、あいみょん、ニューヨーク在住のラッパー、MIYACHIと演奏力には定評のあるジャズロックバンド、SOIL&"PIMP"SESSIONSのトランペッター、Tabu Zombie。彼らの参加が音楽の幅をより広げていた。
1000人の18歳をはじめ、すでに活躍しているミュージシャンも含め、様々な世代が作り上げることになった33歳のアルバムに「ANTI ANTI GENERATION」というタイトルがついた。GENERATION、そう、「世代」である。野田洋次郎は「ギリギリに思いついて、実は違うタイトルで資料も作っていたんです」と言った。
「ANTI ANTI GENERATION」。"アンティ アンタイ ジェネレーション"という読み方のルビが付けられている。
もし、「アンティ・アンティ」だとしたらどうだろうか。「アンチ・アンチ・エイジング」とか「アンチ・アンチ・巨人」というように「何でもアンチする」という風潮に対しての「アンチ」という意味だろう。でも、二つ目を「アンタイ」と読むと意味が違ってくる。漢字の「安泰」である。世の中に蔓延する「安泰志向」に対してのアンチ。そういう「安泰世代」に対してのアンチ。このアルバムはそういう人たちで作り上げたアルバム、ということにならないだろうか。
アルバムの収録曲の歌詞の中に何度となく「敵」という言葉が出てきていた。これから何かを志す18歳にとっての「敵」というような意味でだ。今、彼らにとっての「敵」というのはどういう存在なのだろうと思った。
「大きな世間とでも言いましょうか。ふわっとして漂っている暗黙の無意識。世間の中に同じように存在してるんだけど、自分はその一味じゃないと思っている無意識。自分は加害者ではないと思っている加害者が一番厄介なんでしょうね」
アルバムの中に「PAPARAZZI~*この物語はフィクションです~」という曲があった。
「君の名は」以降、パパラッチに追い回された経験から生まれた歌と言って良いだろう。そのミュージックビデオの中で野田洋次郎は自ら縊死するというシーンを演じている。
自分が18歳の時には18歳をテーマにした作品は作れないだろう。アルバム「ANTI ANTI GENERATION」について彼は「第二の成人アルバム」のようなものかもしれない、と言った。
(タケ)