卓球の新リーグ「Tリーグ」の男子公式戦が2018年12月9日、東京・アリーナ立川立飛で行われた。
第4マッチ(試合)終了時点で、ホームの「T.T彩たま」と、アウェーの「木下マイスター東京」は2-2の五分。勝利チームを決める「ビクトリーマッチ」に登場したのが、吉村真晴選手(彩たま)と張本智和選手(マイスター)だ。
張本「兄弟そろって負けるわけにはいかない」
「負けました。ちょっと張本が強すぎますね」
彩たまの坂本竜介監督は、試合後のインタビューで開口一番にこうこぼした。ビクトリーマッチ(シングルス1ゲーム)、吉村選手はリオデジャネイロ五輪の男子団体銀メダリストだが、張本選手に3-11と完敗し、チームも2-3と敗れた。坂本監督は張本選手にお手上げ状態だ。
「前回(11月17日)も(第1、第2マッチと)2-0でリードしたんですけど、(第3、第4マッチのシングルスの)オーダーを見ると水谷、張本って名前が書いてあるんですよ。うちが勝つためには、どっちかには勝たないといけない。そのために個々のレベルをもっとあげないといけない。上げたうえで対策をしないと勝てない。張本の場合はそのうえでビデオを見て研究しないといけない。それぐらいちょっとレベルが違う。ただ(張本も)人間なんで、だれにでもチャンスはあると思っています」
一方で、張本選手はビクトリーマッチには、嫌な思い出があった。試合後のインタビューで苦笑いを浮かべた。
「面白いのが前回弟さんに負けていて。兄弟そろって負けるわけにはいかないので」
11月25日の「岡山リベッツ」との試合で、ビクトリーマッチに出場し、吉村和弘選手(真晴選手の弟)に6-11で負けた。試合後、コーチで父親の張本宇氏に「5戦目はもう出たくない」とこぼしたことを明かした。だが、「勝とうが負けようが経験になる」と言われて、毎試合ビクトリーマッチの準備をしているという。
懐かしの好カード「水谷VS岸川」実現
彩たまの坂本監督が「卓球を長年やっている人には、たまらない好カードだったんじゃないか」と振り返ったのは、第4マッチだ。対戦カードは、リオ五輪・男子シングルス銅、団体銀の水谷隼選手(マイスター)と、Tリーグ参加の日本人選手では最年長31歳の岸川聖也選手(彩たま)。2人はジュニア時代から、長くダブルスを組んでいた旧知の仲だ。
「水谷VS岸川の試合をみんなに見せたかったというのが一番です。このカードが実現できるのは、Tリーグでしかなかったのかなと思います」と坂本監督。偶然ではなく意図したものだという。
試合後のインタビューで、岸谷選手は感極まった表情を浮かべていた。
「はじめてTリーグのシングルスに出ました。その試合で(水谷)隼とできてすごくよかったです」
一方で水谷選手も「昔のことを思い出しましたね」と柔らかい笑顔だった。
試合は3-1で水谷選手が勝利。だが、坂本監督は「岸川がまだまだできるというところを見せられた」と、今後へ期待をのぞかせた。