「都市型災害」日ごろから住民同士はつながりを
メディアによる震災報道の不足は、被災者自身に必要な情報が届かない事態も招いた。特に高齢者などインターネットに不慣れな人たちは「置き去り」となった。修理業者に頼もうにも、依頼殺到ですぐには対応してもらえないうえ、経済的な負担もある。本来ならボランティアを呼べるはずだが、その存在すら知らない――。
情報弱者になりがちな高齢世帯に向けて、社協では、ボランティアの存在を知ってもらおうとチラシを制作し、市内の家々の郵便受けに投函した。学生の力を借りて「一軒ずつ周り、3万数千部配りました」(佐村河内さん)。中島さんらは、屋根が未修繕の家を訪問して「修繕業者に依頼していない、困っている、という声を聞いたら『社協に連絡してください』と話しました」。ボランティアの要請に必要だからだ。
今夏は相次ぐ災害のあおりを受け、茨木市のように忘れられた被災地がいくつも生まれた。それでも茨木市では、社協が初期段階から積極的にボランティア団体と連携して支援を進め、屋根の修繕は11月下旬で状況が落ち着いた。
今後は、一度屋根に張ったブルーシートが劣化していないかをチェックし、必要に応じて張り直す。実はブルーシートを張る専門業者は存在しないため、レスキューアシストは定期的に講習会を開いて技術を伝えている。自然災害の多発が今後予想されるなか、「茨木モデル」は事態打開のためのひとつのヒントとなるだろう。
大阪北部地震は、都市部での災害という特徴があった。都会では近所付き合いが希薄になりがちだ。茨木市では、屋根の修繕の際に隣の家からはしごをかけて上らせてほしいと頼んだら、断られたケースがあったという。高齢者の家では自力では屋根を直せず、周りの家から「瓦が落ちてきたら危ない」「早く何とかしてくれ」と苦情が出て、住民同士の関係に悪影響を及ぼした。
佐村河内さんは「日ごろから住民同士がつながっておくことが大切だと思います」と指摘する。今回のようにボランティアが不足した場合、単に救いの手を待つのではなく、被災者同士が相互扶助の意識を持ち「困ったときは助け合う」姿勢が、今後は求められる。