情熱と誠実さで企業の「光る部分」見つける

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■『御社の「売り」を見つけなさい!』(小出宗昭著、ダイヤモンド社)

   地域経済活性化は、大企業の誘致から小規模な企業の雇用創出へと広がりを見せている。ちいさな企業百社が一人ずつ雇用を生めば100人になる。

   静岡県富士市が10年前に開始した富士市産業支援センター(f-Biz)は、無料の経営相談に応じる公的組織であり、同様の施設が全国20箇所に増えている。売り上げの拡大を一番大切にするサポート、その秘訣はなにか。

   静岡銀行を脱サラしてこのセンター長に転じた小出宗昭さんの情熱と最新のノウハウを学べるのが本書である。

自社の「売り」はどこにあるのか

   f-Bizには、自転車屋さん、洋服屋さん、消防士の起業など身近な成功事例が張り出され、行列のできる相談所として10年間で累計3万件の相談実績をもつ。

   どんな企業にも強み、光る部分がある。それを見つけ出すことで活路が生まれる。となりの芝生は青いが、羨ましくなったり劣等感を覚えたりするその視線が、自社の「売り」を探す糸口になる。

   自分が顧客だったらと自社を客観的にみる。見つけた「売り」を成功に結びつけるには三つの条件がある。

 ・オンリーワンであること

 ・継続する情熱があること

 ・行動力があること

   通常業務以外で頼まれたこと、いままでの依頼で変わった仕事、ユニークな仕事は「売り」である可能性が高い。弱みが強みになることもある。瓶詰めのソース工場は高圧殺菌でき添加物がいらない。その特長を生かしてオーダーメイドでソースを作る企業に転身できた。

提携や社会的話題を通じて実現する強み

   いちご農家もブルーベリー農家も、単独での六次化はむずかしい。農家レストランをやるよりも、人気のクレープ専門店と提携すればプロの技になる。クレープ店も地元の新鮮なフルーツを使えば差別化と地域貢献になる。双方のニーズに合う提携は成功の早道となった。

   シングルマザー3人がときを同じく美容室を起業した。この話題は地元紙に取り上げられ共感を呼んだ。25歳で看護学校に入学した女性が抗がん剤にともなう脱毛に悩む女性のために「ヘアサプライ・ピア」というかつら会社を起業する。この取り組みもさまざまなメディアで取り上げられ多くの賞を受賞した。社会性のあるビジネスはメディアに支持されるのである。

   f-biz自身チームワークを大切にしている。自分に足りない要素を客観的に眺め戦略的にチームを作る。相手のことをリスペクトし「あなたのことを教えてください」という姿勢で一緒に働く。そのチームが、今度は、相談者に「成功するまで一緒に努力を惜しみません」と伝え続け、その誠実さと情熱が相談者の心を動かしている。

支援のかげの見えない努力

   小出さんは、支援の陰でだれよりもビジネスセンスを磨いている。

   相談者が抱える問題の本質的な部分に気づき、ひらめきや知恵でそれらを解決し、成功に結びつける。情報に対するアンテナ、感度が高く、圧倒的な情報量をもっている。溢れるほどの情報から価値のある「種」を見つけ出す人材は、集めた情報を調査分析し、知識にし、知恵に高めるサイクルが身についている。相談者以上に、いろいろなことに関心を持って日常を送っているのである。

   小出さんの支援は無料。1コマ60分。初対面から事業のこと、経営者の悩みをじっくりと聞いてくれる。KPIやビジネスモデルといった専門用語は出てこない。60分で結論を出し次回までの問いかけを出してくれる。そして、成功するまで一緒にがんばりましょうと継続的な支援を約束してくれる。

   生産性の向上、人件費・コストの削減、赤字の解消をはじめ、経営課題はさまざまな言葉で表現されるが、売り上げが増えればほとんどの課題は解消され、職場は活気に満ち社員は笑顔になる。自社の強み、他社との提携、そして社会的な認知を、お金をかけずに知恵から生み出すのがf-Bizスタイル。北海道釧路市から宮崎県日向市まで、*-Bizの輪が広がり、地域活性化が進むことをお祈りしたい。

経済官庁 ドラえもんの妻

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