サマータイム殺人事件 鴻上尚史さんはロンドンでの受難をドラマに

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もう書くしかない

   鴻上さんの一文を読んで印象深かったのは、やはりツイッターの拡散力と非常時の活用法である。もちろんスマホが手元に残り、かつ、それなりのフォロワーがいる場合に限られようが、迷い犬や盗難自転車の告知と同様、「助け舟求む」の効力は侮れない。

   ちなみに、ロンドンから全世界にSOSを送った鴻上尚史アカウントのフォロワーは4万強。SOSといっても、〈いきなり、一文なしになっちまったぜ。どうする。さあ、どうすんだ、俺!? いきなりドラマチックだぜい〉と、文面にはいささか余裕が感じられる。

   私にも経験があるのだが、物書きの悲しいサガといおうか、突然の苦難や試練が身に降りかかるたびに「あ、これで何か書けるな」という下衆な思いが先に立つことがある。

   いや、ロンドンの鴻上さんはもっと切実だったかもしれない。いずれにせよ、奇跡のような巡り合わせで知人の作家が近くに宿泊中だった。そしてマンションの前には、二人の再会を妨げる「インターホンの不運」やら「サマータイムのトリック」まで潜んでいたのだから、これを書かない手はない

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)

コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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