THE COLLECTORS、「さらば青春の新宿JAM」
今、新宿でロックが聞こえるか

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「センチメンタルは要らないぜ」

   THE COLLECTORSは、加藤ひさし(V)、古市コータロー(G)、山森JEFF正之(B)、古沢'cozi'岳之という四人組。結成が86年。インディーズからのデビューが87年。トップテンヒットやベストセラーこそないものの、コンスタントな活動を続け、2017年には武道館公演を成功させている。2018年11月7日に発売された新作「YOUNG MAN ROCK」は、23枚目だ。やはり映画の中で加藤ひさしは「今の方が忙しいのが不思議だ」と笑っていた。

   THE COLLECTORSは当時の「モッズ」を継承しようとしている数少ないバンドだ。彼らが乗っていたのが前面のミラーを孔雀の羽のように装飾したデコレーションスクーター。着ているのがカーキ色のミリタリーコートと細身のスーツ。ヘアースタイルはマッシュルームカット。すでにロンドンですら見られなくなってしまったスタイル。彼らがなぜ「モッズ」に惹かれたのか、そして、今、日本でどんな風に残っているのかも追っている。

   「モッズ」という言葉で80年代初頭に「めんたいロック」というムーブメントを引き起こした福岡出身のザ・モッズを思い浮かべる人もいるはずだ。当時の「スウィンギング・ロンドン」の「怒れる若者たち」のスピリットを体現しようとしたのがザ・モッズで、その中の都会的な「洒落っ気」や「センス」に啓発されたのがTHE COLLECTORSと言っていいかもしれない。新作アルバム「YOUNG MAN ROCK」は、そんな彼らの今の姿を表しているようだった。

   映画「さらば青春の新宿JAM」を監督・編集・撮影もした川口潤は1973年生まれ。音楽専門チャンネル、スペースシャワーTVで番組を制作、独立後は番組だけではなくミュージック映像や硬派なロックバンドなどのドキュメンタリーを手掛け、ロックファン注目のクリエーター。当時を知らない世代があの頃、何があったのかを知ろうとするドキュメンタリーでもある。JAMに出演していたバンドや若いミュージシャン、リリーフランキーらも登場している。

   落書きだらけの楽屋や手を伸ばせば届いてしまいそうな天井。決して綺麗とは言えない小汚い雑居ビルの地下のライブハウスだからこそ物語る時代の青春――。

   映画は再開発で姿を消してしまった跡地での加藤ひさしの述懐で終わる。「懐かしいとか寂しいとかいう感覚はない」という感想が、「センチメンタルは要らないぜ」というバンドたちが作ってきた場末のライブハウスの最後にふさわしいように思った。

   街は変わる。そして店は姿を消す。そうやって時が流れてゆく。新宿が音楽の街だったのはいつごろまでだろう。

   今、新宿でロックが聞こえるだろうか。

(タケ)

タケ×モリ プロフィール

タケは田家秀樹(たけ・ひでき)。音楽評論家、ノンフィクション作家。「ステージを観てないアーティストの評論はしない」を原則とし、40年以上、J-POPシーンを取材し続けている。69年、タウン誌のはしり「新宿プレイマップ」(新都心新宿PR委員会)創刊に参画。「セイ!ヤング」(文化放送)などの音楽番組、若者番組の放送作家、若者雑誌編集長を経て現職。著書に「読むJ-POP・1945~2004」(朝日文庫)などアーテイスト関連、音楽史など多数。「FM NACK5」「FM COCOLO」「TOKYO FM」などで音楽番組パーソナリテイ。放送作家としては「イムジン河2001」(NACK5)で民間放送連盟賞最優秀賞受賞、受賞作多数。ホームページは、http://takehideki.jimdo.com
モリは友人で同じくJ-POPに詳しい。

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