乳業関係者の業界団体「Jミルク」は2018年11月12日、第48回メディアミルクセミナー「牛乳乳製品と骨の健康~今日 こんにちの栄養学的価値~」を大手町サンケイプラザ(東京都千代田区)で開催した。講師は、女子栄養大学栄養生理学研究室教授の上西一弘氏が務めた。
本セミナーでは、カルシウムが体内で果たしている役割の紹介や、国民のカルシウム摂取の現状について説明された。牛乳はカルシウムを多く含む「骨の健康に良い」食品であることが広く知られ、今ではいつでも好きな時に牛乳を飲める時代だ。しかし今日、国民が1日に摂取するカルシウムの量は十分ではない。
カルシウムは毎日一定量摂取しないと失われていく
カルシウムは骨を作って体を支えるだけでなく、神経細胞機能や分泌の調節など、体のさまざまな機能を調節する役割も担う。カルシウムの99%が存在するという骨や歯は「カルシウムの貯蔵庫」と言える存在だが、何もしなくても日々カルシウムは尿に含まれて一定量排泄され、爪や髪などの脱落により皮膚からも失われることで、その「貯蔵庫」からカルシウムが取り出されて行ってしまう。上西氏は、
「毎日一定量のカルシウムを摂(と)らないと、カルシウムが失われていってしまいます。骨からカルシウムを取り出してくるというのは、どんどんストックを使っていることです。結果、骨がスカスカになり、骨折などのリスクが高い『骨粗しょう症』の状態に陥ってしまう」
と骨の健康リスクに触れ、カルシウムを日常的に摂取することを推奨した。ところが、厚生労働省の「国民健康・栄養調査」によると、国民1人当たりの1日のカルシウム摂取量は1970年代と変わっていないのが現状だ。
上西氏は、牛乳は「骨の健康」や「骨粗しょう症の予防」以外に「認知症の予防」などへの効果が期待できると説明。カルシウム以外にも良質なタンパク質や、高血圧の予防に効果が見込めるカリウムなども含まれる栄養学的価値の高い食品であることを踏まえ、
「骨と健康のために、すべての世代であと1本、あと1杯の牛乳を飲むようにしていけば、骨だけではなくいろいろな健康の増進につながるのではないか」
と締めくくった。